樋口由紀子
子猫ぞろぞろみな宿命の顔かたち
中島生々庵 (なかしま・せいせいあん) 1898~1986
子猫が生まれたときの感慨だろう。あどけない子猫の顔を見ていると、そんな思いがぐっと押し上がってきたのだ。猫は一度に多くの子猫を出産する。DNAが同じだから似ているが、同じ顔は二匹とおらず、微妙に違う。顔かたちが可愛いから、顔かたちが気に入ったからと子猫はそれぞれのところにもらい受けられていく。それによって、子猫たちの人生はおおかた決定する。
どこでどう飼われるのか、どんなふうに生きていくことになるのか。子猫自身にはどうすることもできない。誕生の喜びやめでたさとは別の気持ちが入り組んでいる。「ぞろぞろ」の描写の臨場感、「宿命」という直球すぎるほどの直球の一語は決して新しい見方ではなく、既知のものである。野暮なほど実直に意味をまっすぐに投入している。
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