樋口由紀子
台風はやっぱり外れた西瓜食う
山本半竹 (やまもと・はんちく) 1899~1976
昔は台風が来るというとその防備にたいへんだった。父は会社を早退してきたこともあった。窓に板を貼り付けたり、水を溜めたり、子どもは早くから寝床に入らされた。
「台風」と「西瓜」は夏の風物詩である。それを「やっぱり外れた」というなんとも言えないつぶやきで接続し、台風が外れたことを安堵する。天気予報も今ほど精巧ではなく、予報が外れることも多々あった。「やっぱり」だから、たぶん来ないだろうと思っていても、万が一のために備えていた。しかし、ムシムシとした暑さは残る。よく冷えた西瓜は美味しいけれど、一雨も欲しい。『はんちく』(『はんちく』刊行会 1977年刊)所収。
●
0 件のコメント:
コメントを投稿