樋口由紀子
満五十今朝は早めに顔洗う
中武重晴
今日、私は満五十歳を迎えた。今朝はいつもより早めに顔を洗った。ただ、それだけの、きわめてプライベートな、私事の、只事の、川柳である。「満五十」が今よりもっと高齢に感じた時代である。
昨日と今日はなにも変わらないが、「顔を洗う」という毎朝の行為に「早めに」でなんらかの意味合いを入れる。とらえどころのない感覚を身体でまず認識する。満五十を無事に迎えることができたという安堵と、もうそんな年齢になったのかという感慨を、作者自身の内と外に語りかけている。私も今年年代が変わった。だから、その気持ちがなんとなくわかるような気がする。
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