樋口由紀子
ゆうべ ロールキャベツの美しき
石田柊馬 (いしだ・とうま) 1941~2023
「ゆうべ」のいきなり感やそのあとの一字空けに、作者固有の言葉遣いが見える。「ゆうべは」「ゆうべの」「ゆうべに」と、どのように読んでもいいと読み手に預けられているが、結局は「ロールキャベツの美しき」に着地する。
いかにアングルを変えても、なにより言いたいのは「ロールキャベツの美しき」なのだろう。「ロールキャベツの美しき」に説明と断定がある。この両輪で川柳の長所を切り開いてきた。独自の座り心地ある世界を差し出す。川柳人は何がどうであるかを説明し、断定することである種の高揚感と肯定感を持っている。『ポテトサラダ』(KON-TIKI叢書 2002年刊)所収。
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