樋口由紀子
国道を無事に渡ってきた毛虫
高橋千万子
あの小さい毛虫が国道を渡るのはかなり無謀である。車の往来も多く、作者はじっとその様子を見ていたのだろうか。だいじょうぶか、車が来ないか、轢かれないか、途中で止まらないか、さぞひやひやしたことだろう。
実際にその場に立ち合ったかのようだが、国道の脇の毛虫を見ての想像かもしれない。それを「無事に」という感情を入れて、「渡ってきた」と脚色をした。見てきたような嘘をつくのも川柳の一つの方法である。「国道」も「毛虫」を人生の喩としても読めるが、それでは道徳っぽくなってしまう。
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