相子智恵
肥後守蛇の匂ひのこびりつき 行方克巳
句集『肥後守』(2024.6 深夜叢書社)所収
「肥後守ナイフ」というものを、今の若い人は知らない人も多いかもしれない。簡易的な折り畳みナイフで、鋼の持ち手の中に刃が入っている(ウィキペディアのリンクを貼っておこう)。
昭和50年代に生まれた私でも、小さい頃にはまだ家にあって、鉛筆削りは手動のものも電動のものも普通にある時代なのに、なぜか小学生の頃、肥後守ナイフで鉛筆を削る練習などをさせられたものだ。実家の勉強机の引き出しの中にしまっていたと思うが、まだあるだろうか。
子どもが持っていたもの、という印象があるから、掲句も子どものいたずらであろうと想像される。蛇を獲って切ったか、剥いだのだ。蛇の血を洗っても、その匂いがこびりついている。この残酷さが往年の子どもらしさともいえ、ある年代以上の人々の郷愁を誘う句である。
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