樋口由紀子
砂時計コドモコドモと落ちてゆく
真島凉 (ましま・すず) 2004~
何を計っているのだろう。大人になるまでの時間だろうか。砂時計はふつうさらさらと落ちていく。それを「コドモコドモ」と聞こえる感性に驚いた。作者は中学三年生。中途半端で微妙な年齢、大人と子どもの境界にいる。大人や社会の都合で大人だといわれたり、子どもだといわれたりする。「コドモ」という言葉になにがしかの思いや多少の反発がある。だから、そう聞こえてしまうのだろう。
「さらさら(SARASARA)」ならA音だが、「コドモコドモ(KODOMOKODOMO)」はO音である。プラス「ド」と濁音が入る。A音に比べてO音には引っかかり感が出る。「コドモコドモ」を音と意味の両面から捉えている。さて、砂時計が全部落ちたら、どんな大人になるのか。今しか聞こえない音だから、よく聞いて、今を大切にしてほしいとおばあさんは思う。「川柳の話」(第1号 2020年刊)収録。
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