相子智恵
星涼し電卓のもう進化せず 岡田由季
俳句誌年刊「豆の木」No.24 アンソロジー「鳥人間」(2020.5 発行人 こしのゆみこ)所載
進化し続けている電化製品もあれば、なるほど、〈もう進化せず〉という電化製品もある。電卓は、言われてみれば確かにモノとしての進化がすでに止まっている。
「計算をする」という機能は人間にとって必要だが、ソフト(無形の技術)があればよいわけで、電卓はソフトウェアになり、様々なハード(道具)の中に取り込まれていった。〈電卓〉という道具としては進化しなくても、スマートフォンやパソコンのアプリ、あるいはGoogleの検索エンジンの中などに形を変えて存在し続けている。
掲句は進化を止めた道具としての〈電卓〉に対して〈星涼し〉の季語が優しい。読みながら「ガラパゴス化」ということにも連想が行き、そこから、ガラパゴス諸島できっと見えるであろう、満点の星空を思ったりもした。
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