樋口由紀子
にちょうめのぽすとが赤いといい日です
いなだ豆乃助 (いなだ・まめのすけ)
ポストのほとんどは赤だから、いつも「いい日」なんだろうか。「ぽすとが赤」ぐらいで「いい日」だと言ってしまっているが、「いい日」なんて、めったにやってこないから「いい日」なのであって、そもそも「ぽすとが赤」と「いい日」には何の因果関係もない。と、文句はいっぱい言えるけれど、そのおとぼけ感に惹かれた。
「二丁目のポスト」の実在を希薄にする、あるいは心象の「にちょうめのぽすと」なんだろう。そんなポストが実際にあろうとなかろうとどうでもよくなってくる。寓話のようで、虚だけれど、虚なりのリアリティがあり、ほのぼのしたはぐらかしにやられたと思う。「いい日です」と共感させるのではなく、「いい日」という方向性だけを見せるふてぶてしさもある。この世のすべては錯覚だというかのように、言葉が力みなく踊っている。「第八回卑弥呼の里誌上川柳大会入選作品集」(2020年刊)収録。
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