浅沼璞
跡へもどれ氷の音に諏訪の海 前句
筬なぐるまの波の寄糸 付句(二オ2句目)
筬なぐるまの波の寄糸 付句(二オ2句目)
『西鶴独吟百韻自註絵巻』(1692年頃)
【付句】二ノ折、表2句目。 雑。
筬(をさ)=機織りに付属する道具。経糸の位置を整え、緯糸を織り込むために使用。
筬投ぐる間=極めて短き時間をいう。「さを投ぐる間」とも。[定本西鶴全集より]
【句意】筬を前後に動かす一瞬、寄せる波のように糸が織られる。
【付け・転じ】打越・前句=柳から諏訪湖で水辺における危険予知行動。前句・付句=諏訪湖から波へと水辺の言葉を続けながら、危険予知行動を機織り作業へと転ずる。
*波―海(類船集)。[新編日本古典文学全集より]
【自註】前句に「あとへ戻れ」といへる言葉にたよりて、「筬なぐる」と付けよせ侍る。「波のより糸」は、水辺(すいへん)の取合せに句作りせし。何の子細もなし。
【意訳】前句に「あとへ戻れ」という言葉があるのを手掛かりに、「筬なぐる」とその動作を付け寄せました。「波のより糸」は、水辺の縁語で作句したまでで、何の差支えもない。
【三工程】
(前句)跡へもどれ氷の音に諏訪の海
筬投ぐるその動きにも似て 〔見込〕
↓
筬投ぐるその波の寄糸 〔趣向〕
↓
筬なぐるまの波の寄糸 〔句作〕
前句の危険予知行動「跡へもどれ」から機織りの動作をみとめ〔見込〕、〈水辺の言葉でどう関連付けるか〉と問いかけつつ、海→波→寄糸と連想を広げ〔趣向〕、「筬投ぐる間」という慣用表現を用い、機織りの一瞬を表した〔句作〕。
筬って『世間胸算用』の質種で出てくるアレですよね。
【付句】二ノ折、表2句目。 雑。
筬(をさ)=機織りに付属する道具。経糸の位置を整え、緯糸を織り込むために使用。
筬投ぐる間=極めて短き時間をいう。「さを投ぐる間」とも。[定本西鶴全集より]
【句意】筬を前後に動かす一瞬、寄せる波のように糸が織られる。
【付け・転じ】打越・前句=柳から諏訪湖で水辺における危険予知行動。前句・付句=諏訪湖から波へと水辺の言葉を続けながら、危険予知行動を機織り作業へと転ずる。
*波―海(類船集)。[新編日本古典文学全集より]
【自註】前句に「あとへ戻れ」といへる言葉にたよりて、「筬なぐる」と付けよせ侍る。「波のより糸」は、水辺(すいへん)の取合せに句作りせし。何の子細もなし。
【意訳】前句に「あとへ戻れ」という言葉があるのを手掛かりに、「筬なぐる」とその動作を付け寄せました。「波のより糸」は、水辺の縁語で作句したまでで、何の差支えもない。
【三工程】
(前句)跡へもどれ氷の音に諏訪の海
筬投ぐるその動きにも似て 〔見込〕
↓
筬投ぐるその波の寄糸 〔趣向〕
↓
筬なぐるまの波の寄糸 〔句作〕
前句の危険予知行動「跡へもどれ」から機織りの動作をみとめ〔見込〕、〈水辺の言葉でどう関連付けるか〉と問いかけつつ、海→波→寄糸と連想を広げ〔趣向〕、「筬投ぐる間」という慣用表現を用い、機織りの一瞬を表した〔句作〕。
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筬って『世間胸算用』の質種で出てくるアレですよね。
「せや、七ツ半の筬一丁いうやつや。よう憶えとるな」
はい、ななつなからのおさいっちょう、七五調ですから。
「……言われてみるとそうやな。意味は分かっとるんか」
いや、韻律だけで。
「呵々、わかり安う教えちゃろ。糸四十本を一紀(ひとよみ)としてな、それを基に筬の大小を定めるんや。七ツ半は七倍半のことやからな、三百本の経糸を通す筬のこっちゃ」
……? よくわかりませんが、そんなもんが質種になるんですか。
「ならんもんがなるのが浮世やで」
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