相子智恵
ふらここの子を空へやる手の加減 林昭太郎
句集『花曇』(2023.2 ふらんす堂)所収
ぶらんこに乗る子の背中を押す、その手加減は案外難しい。空を飛んでいるような爽快感を味わってほしいが、本当に空へ飛んでいってしまっては困るのである。
最初は怖がらないように軽く。スピードと高さに慣れてきたら力を込めて。気分がのって前のめりになってきたら、押し過ぎは危険だ。
掲句、動作を直接書かずに〈空へやる〉と表現を飛躍させたことで、そんな機微のすべてが見えてきた。〈空へやる〉の詩的展開は、子どもを空へ差し出す自分のうすら淋しさ、怖さも、子の後ろで同じ空を見上げながら、〈手の加減〉どころか、いつかこの手が要らなくなることも容易に想像させる。
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