樋口由紀子
花びらをいっぱい溜めた河馬の口
天根夢草 (あまね・むそう) 1942~
姫路城の桜も散り始めた。人出は去年の数倍だった。姫路城には動物園も併設されているので、今年もこんな場景が見られただろう。河馬にも当然花びらは舞い落ちる。食べ物でないので、飲み込まないから、花びらは口にひっついたままになる。溜めるつもりはないのにいっぱい溜まっていく。
小さい花びらと大きい口、桃色と褐色の色彩や形状や感触などの対比の見つけ。一見、アンバランスのようで、桜と河馬はほのぼのした絵になる。河馬は花びらを溜めた口を開けてのんびりと眠っているだろう。平和な春の風景である。『川柳作家全集 天根夢草』(2009年刊 新葉館出版)所収。
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