樋口由紀子
笑わない老爺と連れの嗤う老婆
山本忠次郎 (やまもと・ちゅうじろう) 1936~
町で見掛ける老夫婦に目が行くようになった。確かに掲句のような夫婦を見かける。その反対も、あるいは共に笑っていない、共に嗤っている、二人もいる。その中で作者はあえてここを切り取った。もっとも共感したのか、あるいは一番映えたのか。わかりやすい対称構造で、具体性と描写性が富んでいる。
それとも一枚の写真なのだろうか。過っての自分たちなのか。長い時間をかけて形成された、二人にしか出せないは絶妙のコンビネーションなのかもしれない。そこには写っていない重層とユーモアと割り切れなさがある。『現代川柳の精鋭たち』(2000年刊 北宋社)所収。
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