樋口由紀子
あきらめて歩けば月も歩きだし
小林不浪人 (こばやし・ふろうにん) 1892~1954
なんとなくわかる。こういうあきらめのかぶせ方をしたことがある。もちろん、月が歩きすわけはない。「あきらめ」は生きていくうえの大切な対処法で、それは月だってわかってくれている。だから、一緒に歩いてくれていると思いたかったのだ。
「あきらめて」と「月」はなんとも味のある取り合せである。それぞれの言葉は別種で、まったく異なる温度と世界を持っている。「あきらめ」のONのスイッチが入れるためには、都合のいい錯覚を作り出すには、「月」は好適役である。軽妙な韻律で温かみのある絵になった。『東奥文芸叢書川柳22 柳の芽』(2015年刊 東奥日報社)所収。
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