樋口由紀子
太刀魚のひかりをするするとしまう
瀧村小奈生(たきむら・こなお)1958~
太刀魚が釣りあげられるのをはじめて見たときはびっくりした。平べったいうえに無駄に長く、やたらきらきらと光っている。食べ物というよりはまるで装飾品みたいで、魚のイメージからはほど遠かった。
作者はきっと整理整頓好きの人なのだろう。散らかったものはすばやく片付ける。出ているものはすぐに元の位置に戻す。太刀魚も同様でそのままにしておくことができない。だから、ひとまずは巻尺を巻き込むように「するするとしまう」。太刀魚のひかりをこぼさないように自分の中に大切に取り込んでいく。『留守にしております。』(2024年刊 左右社)所収。
●
0 件のコメント:
コメントを投稿