2024年3月1日金曜日

●金曜日の川柳〔川合大祐〕西原天気



西原天気

※樋口由紀子さんオヤスミにつき代打。



失った世界ガソリンスタンド忌  川合大祐

忌日季語というジャンル、というか一群の語彙が、俳句にはあって、12音かそこらのフレーズを案出して、忌日季語をくっつける、という、安易なのか、いやいや作者にとっては切実なのか、それは知りませんが、そういう作句の手順が、まあ、ある。そういう俳句がゴマンとある。だれそれの亡くなった日なのであるから当然、日にちが限定され、そこには季節があるので、季語ということになり、それにまた、365日、誰かが亡くなっているので、「毎日が忌日」というわけです。

ところが、亡くなったのが「だれそれ」ではなく、ガソリンスタンドとなると、話が違ってきます。

じっさい、ガソリンスタンドはどんどん減っていますが、まだ、絶滅はしていない。でも、そう遠くない未来、ガソリンスタンドはなくなるかもしれない。となると、掲句は、未来のことかもしれませんよ、みなさん。自動車業界のみなさん、だけでなく、人類のみなさん。

そのとき《失った世界》とは、なんだろう?

これについては、掲句が、作者が、提示してくれるわけではなくて、読者が考えるなり、考えないなり、するわけですが、ちなみに、とんでもないものに「忌」をあてる試みは、これがはじめではなく、俳句自動生成ロボット「忌日くん」がすでに長らく量産しています(≫10句作品はこちら)。

なお、掲句所収の川合大祐『リバー・ワールド』(2021年4月/書肆侃侃房)は、350頁を超える大部。掲載句の数も多い。幻惑や興奮も多い。謎もスペクタクルも多い。快楽指数のきわめて高い一冊。よくある「無人島に一冊持っていくなら?」の候補に確実に入るであろう一冊と断言しておきます。

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