相子智恵
肘で押す呼び鈴エープリルフール 千鳥由貴
句集『巣立鳥』(2023.9 ふらんす堂)所収
掲句を読んで、そういえば来週の今日はエープリルフールだな、と思う。歳時記によれば、エープリルフールは、日本には大正年間に伝わったというから、日本でも案外長い歴史をもっている。季語としては「万愚節」「四月馬鹿」として使われることが多い。
こうした狙いのはっきりした季語は、取り合わせる内容のバランスが難しい。季語と内容の歩調を合わせればあざといし、内容が遠すぎれば意味不明になってしまう。その点、掲句はバランスがよく、スッと心に入ってきた。
荷物で両手がふさがっているのだろう。何とか呼び鈴を押したいが肘で押すしかない、そう鑑賞する。その必死さが生み出すうっすらとした俳味に、「エープリルフール」がスッと入ってくる。〈呼び鈴〉〈エープリル〉の響きと破調のリズムも、ちょっと楽しい。
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