樋口由紀子
綿棒を入道雲に突っ込んだ
野口裕(のぐち・ゆたか)1952~
今日も猛暑で入道雲がむくむくと張り出している。いつまでこの暑さが続くのだろう。うんざりする。風船に針を刺して、風船をしぼませるように、入道雲に綿棒を突っ込んで、入道雲を退散させたい、そう思ったのだろうか。それとも綿棒を突っ込んだら、耳掃除してもらうように気持ちよくて、入道雲はムクムクと動き出すと思ったのだろうか。どちらにしても子どものいたずらのような、遊び心満載の一句である。
実際にはありえない景を言葉で立ち上がらせている。愉快な発想で、想像を超えた臨場感がある。無為の行為への注目に人をくったようなユーモアがあり、独自の生命力と描写力にあふれている。
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