10句競作(第2回)応募作品
作品1点追加 2011.08.25
本誌募集の10句競作(第2回)は34作品と、前回と同様多数の御応募をいただきました。誠にありがとうございます。審査・選考の骨子・日程が決まりましたので、以下にお知らせいたします。
1 8月25日(木) ウラハイに応募作品を掲載(コメント欄に感想等を自由に書き込んでいただいて結構です)
2 9月1日(木)22:00より ●10句競作(第2回)の件審査選考ライブ。上記記事のコメント欄にて進行します。第2回の審査員は、榮猿丸氏、青山茂根氏、中村安伸氏。haiku&meの3氏です。
3 審査選考ライブにて、本誌掲載作品を決定(時間切れの場合、日時を改めて、続・審査選考ライブに決定を持ち越します。
4 【本日】9月6日(火)22:00より●10句競作(第2回)の件審査選考ライブ続編。上記記事のコメント欄にて進行します。第2回の審査員は、榮猿丸氏、青山茂根氏、中村安伸氏。haiku&meの3氏です。
感想etcはご自由に(≫コメントの書き込み方)
1日の審査選考ライブを待たずとも結構です。
更新ボタンorF5キーで、最新のコメントをお読みください。
●
9月6日(火)22:00より当エントリーのコメント欄にて。
青山茂根、榮猿丸、中村安伸の3氏による審査選考ライブ続編。
ご不明の点等ありましたら、seventhfox@gmail.com (生駒大祐宛)まで。
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【01 新・露出狂】
水泳帽を小田原に忘れけり
友人の紹介といふバナナなり
先生の桃色乳首草相撲
海月赤し深層心理なる夢精
緑蔭はどこへ水道管を罅
性的興奮中のはんざきなり
冷房に老いて激しき勃起なり
びちよびちよをぐちよぐちよにして桃食ひぬ
しやぶれしやぶりつけ西瓜しやぶりつくせ
戦後とはまさしく女陰大西日
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【02 株主総会】
想定問答繰返し明易し
株主の蟻の如くに来りけり
アイスティー飲み株主の語らへる
株主の席に置かるる団扇かな
会場のマイク係の玉の汗
異議なしに異議ありと云ふ白扇子
壇上の麦茶の滴だらけなる
円団扇決議に賛意示すかな
株主の後姿の夏帽子
総会の果て冷房の音大き
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【03 夏の傷痕】
炎昼のレバー貪るはとこかな
白南風の吾子の歯めきめき伸びにけり
服乱れしをんなゆるりと西瓜にのまれ
月光の乳房嬲る青鉛筆
二歳児に小児性愛を説く秋桜よ
台風や真つ赤になつてつきまとふ
なめくぢの残滓を跨ぐ団地妻
月光の石榴残してソープ嬢変死
夏の傷痕季節過ぎてもまだ癒えぬ
氷河期の気分味はふ雀かな
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【04 炎昼裡】
一行詩青い岬の尖端に
朝市の水が飛びつく跣かな
炎天や道は火が這ふ導火線
街中の印刷がずれ炎昼裡
炎帝に一縷の黒も許されず
大鳥居より片蔭を授かりぬ
風鈴のごと炎天に城うかぶ
蝉しぐれ寺院寺院に耳吊るし
はつきりもくつきりもゐる樹陰かな
ヨット入港夕焼けの幕が下り
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【05 座禅】
達磨さま蚊音にくしゃみ心太
仏法僧ストリートダンス木漏れ月
ヘッドフォンロックにしみる蝉の声
朝コーヒお釣りの手触れ梅雨晴間
目薬でまつげ流され戻り梅雨
炎暑かなお化け屋敷が停電し
日射病白犬家族ソフト舐め
イヤホンにうなじ取られて朝顔は
ボストンはクラムチャウダーしじみしる
日の本の達磨は起きる忍草
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【06 片膝】
上手より名優出でし夏芝居
新幹線改札口の花氷
地図にある川の蛇行や秋暑し
雑草を分けて水引草長し
八月大名港の見える座敷かな
片膝の膝にのりくる茄子の馬
皆人の整列したる流燈会
大広間静まり返る盆の月
銀漢の先端天主堂につき
流星の海へ海へと落ちゆけり
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【07 無限接点】
マンボウのまばたき車輪の発明
対話篇からはみ出す赤いストロー
泣きながら遠くへ投げる聴診器
長袖のシャツでくるんだ父の首
始まりを思い出すまで手をゆすぐ
消火用ホースに腋をくすぐられ
樹液すずやか責任感のある眼球
へその緒を液晶画面にくぐらせる
疼痛がノートに置いた玩具にも
日本語を嗅がすと汗をかく表土
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【08 夏休み】
甘味屋の夏暖簾より呼ばれけり
そこここに着信音や街薄暑
江ノ電の窓をはみ出す雲の峰
手作りの風鈴並ぶ無人駅
テーブルに猫の跳び乗る海の家
欄干に凭れてバナナ剥いてをり
玩具箱より溢れたる夏休み
宿題のノートに西日届きけり
ミルキーのとろんと甘く合歓の花
まだ潮の匂ひ残れる夏帽子
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【09 Summer In The City】
高速道の大き片蔭町つらぬく
美少女が団扇を配る繁華街
コンビニの埋蔵アイス探査せる
太陽と笑ひの飛沫区民プール
名画よく冷え冷房の美術館
駅徒歩5分マンション全戸西日のドア
夕焼の残照に浮く高層ビル
パチンコにつぎ込み夏の星降らす
駅のホーム混み合へれども夜涼かな
列車の灯銀の鎖や夏の果
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【10 夜 叉】
葛あらし絡繰木偶が夜叉となる
なまなまと海鳥の鳴く展墓かな
潮嗄れて天牛鳴くよ箱の中
人形を焼く栴檀の実の下に
穂孕みの風に柩を運び出す
早稲の匂ふや骨壷に骨満ちて
月代の裏戸より舟出しにけり
月待つや肉桂の枝噛みながら
蛇穴に入る時きつと宙を見る
曼珠沙華眼の筋肉の衰へて
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【11 蝉鳴くや】
山門に気勢をあぐる蝉嵐
向日葵の千の眼の見し殺人者
被災地の牛舎に残る扇風機
虹の橋登りはじめる兎と亀
驟雨きて街に火薬の臭ひ満つ
遠雷と原発事故の光化学
金蝿よ俺の額は生きてゐる
蝉鳴くや六日九日十五日
炎天に孤独死のゼロの広報車
ブナ林にゲンパツと鳴く秋の蝉
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【12 情熱諸島】
不意打ちは女人高野の自販機か
にせもののタンバリン買うかの裸族
情熱でやつめうなぎにふたをする
怪獣のかさぶたじょうの和平かな
鶏頭とするだるまさんがころんだ
仏壇を投げればぜんぶコヨーテだ
肺も骨も脳をおいぬき秋の朝
ながれぼし一円玉は浮きすぎる
横綱は枯葉をつけて現れる
青葱のしろいところは父の番
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【13 地球空洞説】
行き止まりばかりではない半ズボン
萬歳に圍まれてゐる暑さかな
アルピノがアルピノを喰ふ夏館
夏草の誰かが掘つた落とし穴
生き埋めになることもある流れ星
地下道の階段濡らすラムネかな
ダダ漏れの個人情報蟻地獄
夏蝶や地球の裏側へと放つ
ラッカーとポーとウェルズと夏料理
これからは嘘だけついて端居して
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【14 だれにともなく】
なにがなし桑の実食うて国想ふ
水馬たゆまずやまずおなじ位置
幼ゆび指せばへんぽん蛇の衣
遠花火音待つこころ沸と湧く
燕の巣そこに迂曲の風とほる
蝙蝠のばらばら騒ぎくる逢瀬
うつしよの蛇身曝して川渡り
採血の針刺し直すアマリリス
またひとつ夕日が沈む原爆忌
蝉時雨だれにともなく黙祷し
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【15 夏の果】
本堂の無道の墨書涼しかり
イエスタデーBGМに魂迎
黒文字の水羊羹をなだれゆく
空蝉となり静脈をさらしをり
みんみんのみんともいはず夏の果
高殿を深くとよもす法師蝉
夕暮れて蝉時雨より虫時雨
田の神のビルの間や秋暑し
折鶴の白ばかりつり稲つるび
遠くより煙の匂ひつづれさせ
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【16 ヴァカンス】
豊の秋たましひつぶしたまふ日の
発語して光をにごす須臾となる
天と地を構造できず百舌しづか
われもかうゐるやうでゐてゐないやう
イッヒ・ロマン棄てにけり小鳥くるたびに
空棚に在るいつまでも鳥影が
白桃の手よまれびとを抱かずとも
宵闇や白い果肉に食われゆく
あてのない手紙のやうに折れ曲がる
ヴァカンスやすべからく季節崩ゆるべし
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【17 雨】
バナナ腐る雨は降らないだろう傘折る
ハリボテのソフトクリーム雨に溶ける
よほほと嗤ふあんなに快晴だつたのによほほ
嗚呼予想を裏切つてカアテンの裾が濡れた
雨降る否降りやがるのだキスしたら駄目かよ
喧嘩した雨音のかゞやきが邪魔で邪魔で
手をつないでやらんでもない水たまり
びちゃびちゃのブランコ漕いで乾くまで逃げんな
いろんなものが滴るなかに手もあった
この雨を無理やりまとめる虹を作らう
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【18 夏桃さん】
冷蔵庫の中から取り出す夏休み
黄桃をもてはやしてる吉祥寺
どぶ川に流れるきみの桃本や
夏の日にコンドームと桃拾う友
あと少しあいつの桃の季も終はる
白桃の如きあなたの膝枕
ストッキング皮を脱がせて食べやうか
半分にけつを割つたら美味な汁
願わくは桃の忌になれ くそやろう
白桃はシンデレラなので帰ります
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【19 離味句素】
吾一人置いて立ち去る鰻かな
いかづちにまかせて泣けよオットピン-S
酸漿剥いて歯科を明るくしてあげた
天の川わたる南京豆離脱
幻影は二十世紀を齧る姉か
エレジーのたとへば秋の小樽運河
排卵がなくて滑子のしらべかな
鹿威し貫く業の如きもの
渋柿や痴狂ひにして人の美味
人間を並べておけば交(さか)るなり
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【20 晩夏】
吹き抜けのヨガスタジオや仏桑花
バナナ食ぶ朝一番のヨガクラス
ピアソラに酔ふごと昼の冷酒かな
夏深し崩して食ぶるタコライス
晩夏へとロングボードの漕ぎ出しぬ
モニターに映る花道秋立てり
秋蟬や公園に向く楽屋口
小劇場のチラシ分厚き世阿弥の忌
虫の音や補修されたる歌詞カード
輸入盤開けると匂ふ夜長かな
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【21 行つたきり】
うきくさの高きところに星盛る
箱庭を真白き舟のもり上がる
あたらしき蜘蛛の囲に水つもりけり
洗つても洗つても砂大西日
蓮の葉と空の埋もれて午後来たる
階段の蟬の骸が濡れてゐる
鳥飛ぶ仕組み水引草の上向きに
初秋やゆふかぜ朱鷺に長くふき
月の出を待つ間に森の闌けにけり
おとうとの七夕笹の行つたきり
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【22 あちら・こちら】
草刈の野にひしめくや小説家
蜘蛛の囲や少女のふるふ大鋏
ゆらゆらと子ら運ばれてゆく緑
輪郭の確かなわたし髪洗ふ
夏月に眠りの糸が垂れてをり
花あやめここは子供の来ない家
箱庭に人差し指を棲ませけり
ちちははの緩慢な水あそびかな
蛇苺そこから先が死者の国
たましひのかたちの小石夏ともし
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【23 生簀】
花過ぎてプロレスの来る広場かな
噴水に鳥の名あまた知る人と
プールより見ゆる生簀のレストラン
一雨きて蛍日和と言ひにけり
とりあへず丼に受く兜虫
盆僧のまへにビー玉転がり来
アッパッパつかめば婆が抜け落ちる
草笛吹くデモ行進に連なりて
恐竜の尻尾重たし夏の果
三叉路の左右とも霧うしろも霧
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【24 果実】
ハート型蜜内蔵のリンゴ一顆
花のごと皮をひろげてミカン食ぶ
黒ブドウ一粒ごとの一輝点
イチヂクや平然とつく嘘に嘘
ザクロ裂くまず付け爪を外しては
前世はバナナと信じつつ食す
握りたる手よりトマトの溢れ出す
石版の堅さ冷たさみたいなナシ
眼窩にはイチゴををさめ少女たち
書信代はりに送る富有柿ふたつ
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【25 暮れる】
蛇口より懐かしきものかよひくる
渦巻の途中の二重丸は良し
花びらの目ならば目びらとも言ひぬ
似顔絵とならずに顔の絵が暮れる
引つかけるため頂点が三日月で
蔓巻きぬ楽器となれば良かりける
海賊は水を含んで重かりき
されば鮫を次男とすれば分かるなり
魂と裸連結して褌
冬空に干せば消しゴムらしくなる
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【26 全力】
マスクして菜虫を殺す霧をゆく
ががんぼの窓を叩いてゐる全力
羽蟻に羽ありて暮らしは変はりなし
灯を消して火蛾百匹とゐるぬめり
蜘蛛潰す音つぎの日もそこにある
黒蟻の何も担がぬ白き昼
糸蜻蛉墓石は聖書開くかたち
蝉落ちてお悔やみ欄に乗せてやる
放埒の貌を叩いて黄金虫
十匹に一匹足りぬ晩夏かな
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【27 三分の一】
初夢に母と話せば覚めにけり
子の肩に触れてはじけししやぼん玉
春愁ピアノの埃つよく拭く
振り返りやがてまつすぐ入学子
ふらここを少し揺らして降りにけり
後ろ手に子は手紙持ち母の日よ
初任給手渡してゐる帰省かな
打解けしいとこ同士や踊の輪
全集の前の持ち主夜の秋
抽出しに方位磁石や夏の果
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【28 夏の谺】
夏館ソプラノ纏ふ天使像
一眼のあり向日葵も原子炉も
夏深し闇に伸びゆく倉梯子
いま吾子にはじめの記憶草清水
冷酒一盞雲滑らせて空は坂
泣き終へて松山鮨のどこ崩そ
木曜のくちづけ涼し切子玉
ラマダンの大皿に盛るダリヤかな
花火の夜人を待たせて遠目なり
二万年のちにも仔ども猫じやらし
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【29 尾行】
テロリストの墓飾るための菊ことごとく
黒猫に尾行されてた月角曲がる
髪洗ふ巫女百人の紅き爪
チェシャ猫一番涼しい場所に浮いている
君の体届けに君の棺追ふ月夜
猫のゾンビ鼠のゾンビと虹ばかり
青い月。暗闇にリムられてゐる
最初の猫がまだ遊んでる宵闇
十年分の抗鬱剤ぶちまける秋の海
夜開く猫の保健室の風鈴
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【30 夜の果ての旅】
忘却の革命の血のさくらんぼ
シエスタの人買ひ薄目あけて眠る
殺むれば音の気になる冷蔵庫
疲鵜にだいぢやうぶだいぢやうぶと云はれけり
八月の甘納豆を深読みす
へうたんにハイとこたへて魂(たま)抜かれ
ジョーホーホシジョーホーホシと秋の蝉
水澄むや一つ根に離れ浮く平和利用と核武装
心中の片割れとして盆をどり
「夜の果ての旅」に誘ひぬ夜学子は
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【31 春雷】
風雪に曲がりし木々も芽吹きたる
或る日胸に春雷が落ち今がある
玫瑰や雨に消されし波の音
病葉の重なりゆける水の底
ひねくれし胡瓜どれもが無農薬
ふたりとは一人と独り夜の秋
砕け散る硝子色なき風となる
倒れてもおのれを曲げず曼珠沙華
音もなく翅を使ひし冬の蠅
星冴えて太古の空を取りもどす
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【32 十点鐘】
一月三十一日 ジャイアント馬場
王道忌静かなる光源月明かり
四月二十八日 ルー・テーズ
鉄人忌しなやかな筋肉(にく)の美しき
五月十三日 ジャンボ鶴田
怪物忌書き掛け論文めくる風
六月十三日 三沢光晴
喉鳴らし猫の背伸びや翠玉忌
七月十一日 橋本慎也
豪雨去り天跨ぐ虹爆勝忌
七月十七日 ブルーザー・ブロディ
超獣忌雄叫びこだまし空を舞う
七月二十八日 カール・ゴッチ
偉大なる力の哲学ゴッチの忌
八月二十八日 山本小鉄
道場に古びた竹刀や軍曹忌
十一月二十五日 星野勘太郎
喧嘩屋の拳の早し突貫忌
十二月十五日 力道山
人を超え神となる意志力道山光浩の忌
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【33 卯の花にほふ】
郭公や次男に妻のやうな嫁
青かへで小股の切れたをなご抱く
入道雲抱へきれないまま絶句
卯の花にほふ「かあさん」と言ふ口癖
残暑かな「雨ニモマケズ」を諳んじる
線香のけむり真っ直ぐ遠花火
時計草虫の音止むと泣く子かな
締め切り迫る鈴虫に部屋明け渡す
悪字を打つパソコン画面水中り
クマゼミ鳴くマイクを持った好好爺
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【34 御来迎】
山彦に応へて手振る雲の峰
空眩し雲海の上に出でたれば
赤岩の頭と称へ雲海に
御来迎斜め後ろに立ちてゐし
御来迎虹に呑まれて消えにけり
駒草に近づけてゐる目鼻かな
駒草やカイゼル髭を撥ね上げて
駒草や八ヶ岳(ヤツ)の外れの天狗岳
マジックの校名かすれ大テント
天幕村に酒飲みに来し小屋泊まり
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
以上 34作品
●
2011年9月6日火曜日
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328 件のコメント:
1 – 200 / 328 前› 最新»一人一句選んでみました。
暑さのせいか、わかりやすい句、目につきやすい句に選が偏ったかもしれません。
1 ---- 8
2 ---- 6
3 ---- 6
4 ---- 7
5 ---- 4
6 ---- 6
7 ---- 1
8 ---- 5
9 ---- 3
10 ---- 10
11 ---- 3
12 ---- 7
13 ---- 6
14 ---- 7
15 ---- 4
16 ---- 2
17 ---- 10
18 ---- 5
19 ---- 7
20 ---- 9
21 ---- 7
22 ---- 6
23 ---- 5
24 ---- 3
25 ---- 7
26 ---- 3
27 ---- 1
28 ---- 7
29 ---- 5
30 ---- 2
31 ---- 3
32 ---- 8
33 ---- 3
34 ---- 7
コメントのテストです。
テストです。
わたしもテスト。
テストです。
さて、もうそろそろ時間なので始めさせていただきます。私は今回の捌きを担当する生駒大祐です。
よろしくお願いいたします。>審査のお三方&ご観覧の皆様
よろしくお願いします。しょっちゅう更新ボタンを押さないといけないわけですね。
僭越ながら審査に加わらせていただくことになりました、中村安伸です。
みなさまよろしくお願いいたします。
更新ボタンorF5ボタンは適宜押していただく形でよろしくお願いいたします。(自動更新されません)
【コメントしてくださる皆さんへ】
1)割って入ってくださって結構ですが、いちおう話の流れに乗ってください。
拾いきれず、御コメントをスルーすることもあろうかと思いますが、そのへんはお許しください。
(カオス化の予感も)
2)書き込んだのに表示されない、あるいは、いったん表示されたのに消えてしまったという場合は、再度書き込みをせず、少しお待ちください。
書き込んでいただいたコメントを、ブログサービス(bloggr)が自動的に「スパム」と判断して削除/未公開にしてしまうケースが多々あるのが、コメント消失の原因です。手動でのスパム解除をお待ちいただければ、コメントは無事反映されます。
F5を押すと、一番上に行ってしまうのですが、どうすれば最新のコメントを読めるのですか?
出遅れました。よろしくお願いします。
【基本方針について】
審査選考と銘打ちましたが、優劣をつけて、ふるいにかけて、優秀作を選ぶという態度よりも、おもしろい作品、おもしろい箇所を見つけようというのを基本姿勢にしたいと思います。
ただ、どこがつまらないか、どこがダメかといった指摘等もまた、作者にとっては、称揚と同じくらいに貴重なものだと、経験上、思います。否定的見解も忌憚なく披瀝していただければ、と思います。
この辺は前回を踏襲しております。
>匿名さま
記事の下のほうの「(コメント数)コメント」というリンクをクリックしていただき、そこでF5を押していただくとコメントが読めるかと思います。
Endを押せばいいのですね。
whさま
了解いたしました。
さて、全員そろったようなので、
まず審査のかたがたに並選4点、特選1点を書き込んでいただきます。
青山茂根です。以下選を。まだ揺れてます。
並選
○【10 夜 叉】
○【21 行つたきり】
○【23 生簀】
○【25 暮れる】
です。
特選
◎【26 全力】
です。変わるかもしれません。皆様ご意見を。
早速ですが、以下のように選ばせていただきました。
並選
【07 無限接点】
【16 ヴァカンス】
【17 雨】
【26 全力】
特選
【21 行つたきり】
それを元に優れた作品を議論して行きたいと思います。
特選 17「雨」
並選 7「無限接点」
20「晩夏」
23「生簀」
27「三分の一」
審査のみなさま、ありがとうございます。
ううむ、07 無限接点はぎりぎりまで迷って並選からはずしたのでした。
数の制限で取れなかった作品をお二人が取ってくれてる。
意外に!重なってますね。
具体的には【10 夜叉】【23 生簀】はとりたかったです。
特選は2点、並選は1点と数えています。
3点が最高点で3作品、2点が2作品、1点が5作品ありますね。
「夜叉」はどなたかがきっとお取りになると思っていましたので、惜しみつつ外したのでした。
審査のかたがたも迷われていたようですね。
では、まずは第一席から決めていきたいと思います。
【21 行つたきり】【26 全力】は猿丸さんノーマークなんですね。かんがえどころ。
【09 Summer In The City】は0では?
あ、ミスがありました。>安伸さん
訂正します。
重なってるようでいて三人とも入れてるのってないですね。
そうですね。前回はそれがあったのですが・・・。>安伸さん
まずは特選の弁を伺いたい。
>21 行つたきり】【26 全力】は猿丸さんノーマークなんですね。かんがえどころ。
さて。まずは第一席から決めて行きたいのですが、皆さんの特選作品が最高点(3点)の作品に入っているので、第一席はこの3作品(【17 雨】 【21 行つたきり】 【26 全力】 )から決めることに異論はないでしょうか>審査のかたがた
はい。そうしましょう。
では、まずみなさまに特選の理由をお聞きしたいと思います。
3作品から選ぶことに異議ありません。
そう、悩みます。21も7も最初特選候補だったのですが、26の、基本は描写ながら、そこから飛躍させる力。発想の豊かさから読者を納得させる範囲へ落とす手腕、かたちの完成度、類想句の少なさで最終的に推しました。「蜘蛛潰す音」「蝉落ちて」「放埒の貌」など独自の世界がある。最後の句も何気ないがこの少し怖い世界へもっていく手腕。クリスティのようで。
ぼく、「選考」しちゃってるかも。そこはご容赦を。
17「雨」応募作品全体を読んで、一番オーソドックスに感じたのが意外でしたが、それは、この作者がこの文体を確立されている、文体に迷いがないと感じたからでしょう。ちゃんと自分の持ち味がわかっている方だろうと。
「雨」というシンプルな題もいい。今回、力んだ題名を付けられる方が多かったですが、この方は作品全体を見通して、どこで力むか、力を抜くかがきちんとわかっている。雨というテーマと、気分、文体、つまりモードがマッチしていて、ある意味での洗練を感じました。ストーリーがあって、10句がまとまっていて、たのしく読みました。
一番好きなのが、「喧嘩した雨音のかゞやきが邪魔で邪魔で」。フラットな恋愛関係の中での、メーターの針がぶんぶん揺れるような、不安定な心の動きがいじらしく捉えられていると思いました。「かゞやき」という言葉がちゃんとかがやいています。
用意してきたコメントですが。
【21 行つたきり】
水や風の微妙なはたらきをとらえた描写の繊細さと、とり合わせの感覚の冴えが魔術的な域まで達している。
単純な二物衝撃ではなく、隅々までコントロールの行き届いた、よく仕上がった句群という感じ。
十句に共通の情感というか、トーンがあって、連作としても破綻がない。
強力なオリジナリティーがあるというわけではなく、俳句が積み重ねてきたものを、自分なりに上手く乗りこなしている感じで、無理がない。
3作品、お二方が入れていてお一人が入れていないという形です。点を入れなかった理由はどのあたりにあるのでしょうか。
【26 全力】
について、以下が用意したコメントです。
虫を詠み込むことで統一感を出している。「蜘蛛潰す」「黒蟻の」「糸蜻蛉」の三句は格調高く印象明瞭であった。「全力」をタイトルにしたのは良かった。虫という語を使わず、そのものをよく捉えた一語で、十句全体に浸透していけるタイトル。
「蝉落ちて」「十匹に」の二句はトーンが異なる。虫でなく人の句になっている。
特に、強力に反対する理由などありましたらお聞かせ願いたいです。
あ、すみません。
私は一応全部入れてるので、取ったコメントを先に書いちゃっていいでしょうか。
はい。お願いいたします>安伸さん
21「行つたきり」
いま読み返すと、たしかに全体のトーンが統一されていて、洗練された句群ですね。ぼくはそこに引っかかってしまったというか、素通りしてしまった。まとまりすぎているという印象。
【17 雨】
日常生活を少しずつ蝕んでくる雨の不快感と、少し乱暴なセリフの切実さが組み合わせられてスリリングな作品群になっている。後半から最後の句に至るカタルシスは連作ならではのものであり、他の作品にはないもの。
前半とくに三句めなど、一句としてみると少し弱い印象のものもある。
安伸さん読みつついれます。時間がもったいないので。票が割れるなら私はみなさんとってる7を推したいです。【07 無限接点】 完成度、独特の文体を獲得している。遠い二つの事象をつなぐ手腕など評価したい。
しかし21、26もまだ落とせないです。
7「無限接点」
俳句という短い定型詩が生み出す言葉の飛距離を信頼しているような作りで、安定した力を感じさせました。「無限接点」という題名は、この方の作句信条というか、俳句の作り方を言っているのかなとも思いました。
とても攻めていて、ぎりぎりのところを狙っている。攻めすぎてわからない句もありますが、「対話篇からはみ出す赤いストロー」「日本語を嗅がすと汗をかく表土」あたりに惹かれました。「消火用ホースに腋をくすぐられ」は攻めているようで、機知に堕してしまっていて、残念に思いました。
個人的には【07 無限接点】を含めて4作品横並びで、一番疵がないのが【21 行つたきり】という印象です。
では無限接点を入れての4作品から第一席を選ぶことにしましょう。
26「全力」についてお願いします。>茂根さん、安伸さん。
【21 行つたきり】たしかによくまとまっている。しかしよく見るとパロディ句もいれてあって(階段の蟬の骸が濡れてゐる 階段を濡らして 攝津のもじり?)「鳥飛ぶ仕組み」の文体も試みているし、「月の出を」の感性、最後の句の笹流しを詠みつつ、現代性を加味した構成など評価したいです。
【07 無限接点】
タイトルじたい矛盾するものの衝突だが、句も身体感覚に直接訴える語と、無機的な異物感をもつ語を取り合わせて、独特の渇いたグロテスクさを出している。
一句単位でみると難解なところもあるが、イメージの連鎖したときに生み出される空気が共通しているので、十句まとまることで力強い感じが出ている。
句の数がもっと多いと逆に単調になってしまうかもしれない。
猿丸さん、仕切っていただいてすみません。<26「全力」についてお願いします。>茂根さん、安伸さん。
よろしくお願いいたします。
ぼくも「17 雨」「7 無限接点」をまず最初に選んでいたので、4作品の中からでけっこうです。
安伸さんは横並びということでしたが、ほかのお二人の4作品への印象はいかがでしょうか。
【26 全力】についてですが、茂根さんは最後の句を評価されていますが、私は最後の句がやや図式的に感じて特選にできませんでした。
蜘蛛潰す音つぎの日もそこにある
黒蟻の何も担がぬ白き昼
糸蜻蛉墓石は聖書開くかたち
この三句は全体のなかでも特に優れていると思います。
やはり、ぎりぎりまで言葉を練っているかの完成度を取りたいです。その意味で、26の一句目「マスクして菜虫を殺す霧をゆく」菜虫をこんなホラーな世界まで広げた句は今までないです。しかし、写生とみれば、全くの客観写生。殺虫剤撒いてるだけ。しかし、ごく日常的な事象を、虫を中心に置くことで、魚眼レンズにうつす様に不穏な空気で描きだす。素材は同じでも、切り口、構成でこうも詠めるのかと。
ぼくは正直、「21 行つたきり」と「26 全力」は一句も〇を付けていませんでした。ただ、全部ダメという意味ではもちろんなく、「行つたきり」は先ほどコメントした理由。「全力」は全句、虫を詠まれていますが、トーンが統一されてしまっているのが、すこし単調に感じました。
猿丸さん、【26 全力】はいかがだったでしょうか。
あ、すれちがいでした。
茂根さんの4作品の評価のグラデーションはどんな風だったのでしょうか?
26「全力」
「マスクして菜虫を殺す霧をゆく」ぼくは大げさに感じて、逆に覚めてしまった。逆に「マスクして」が怖くない。
26「全力」
さきほど単調に感じたと発言しましたが、「〜て」という表現が多いこともあるかな。ここ工夫すれば、もっとすごい句になると思いました。そこが惜しいと思います。
「マスクして」の句に関してはどちらかというと猿丸さんに賛成です。
僕が見ていると、茂根さんが強く推す【26 全力】と猿丸さんが推す【17 雨】 が有力なのかなという感じですが、いかがでしょうか。安伸さんはどちらにも入れていらっしゃるし。その意味で茂根さんの【17 雨】の評価はいかがでしょうか。
07 最初の特選でした。が、一句目が推せなかった。独善的なようで、似た形象の取り合わせ。「責任感」という表現にも首肯できず。
17 確かに口当たりよく、全体として連作の流れでするりと読めるし理解できる。しかし、一句として残っていくだろう句を発見できませんでした。私に受け取る力がないのでしょうが。
21 まとまりとして、全体の印象は非常によいと思います。そこが弱さか。
26 多少独善的な世界であるし、好き嫌いは分かれるでしょう。しかし、句のひとつひとつに最も完成度をもとめている、と見ました。
「17 雨」には、ワンテーマでありながら、十句の中に感情の起伏や、色彩のグラデーションがある。そこにも惹かれます。3句目の「よほほと嗤ふあんなに快晴だつたのによほほ」も、この十句のなかで読むと、疵には見えないです。
この17のなかでお二人が最も推す一句を知りたいです。その理由もぜひ。連作といえども、やはり一句で立つ作品がほしい。
あ、私は26を強く推すわけでもないのです。まだ迷っているところあって。全作のなかでもっとも惹かれた句はここにないですし。
順当に考えれば、21のほうがこういった選のtopにふさわしいと思います。
それより生駒さんはどうですか?正直に。
捌きの立場でなんですが、
僕は【21 行つたきり】 に魅かれました。もっとも句に○がついたし、全体のトーンもまとまっています。
【17 雨】
3句めは作品群としてみると変化をつける役割を果たしているので、疵とは言えないかもしれませんが、一句としてみるとやはり弱いと思います。
一句単位で推すのは
喧嘩した雨音のかゞやきが邪魔で邪魔で
ですね。
「21 行つたきり」は、「鳥飛ぶ仕組み水引草の上向きに」好きです。凝った表現ながら、不思議な気持ちよさがある。「引」「上」という言葉が「仕組み」と響いている。
猿丸さんも
、「喧嘩した雨音のかゞやきが邪魔で邪魔で」
が一番好きだとおっしゃっています。
21の「鳥飛ぶ仕組み」いいですよね。
安伸さん、「21 行つたきり」だとどの句を挙げますか。
やはり第一席は【21 行つたきり】がふさわしい気がします。
圧倒的ではなかったということが記憶されればいいのではないでしょうか。
複雑なことをやっているのに、一見地味に見えるくらいなめらかに仕上がっているというのは、凄いことだと思います。
残っていく句と、そのとき惹かれる句は違うのではないか、と考えています。
今回、すべての句を縦書きに直して読みました。横で読むのと、受け取り方が違うのかもしれません。
一句だとやはり
鳥飛ぶ仕組み水引草の上向きに
です。
あたらしき蜘蛛の囲に水つもりけり
もかなり好きです。
安伸さんから提案がありましたが、【21 行つたきり】についてお二方はどうでしょうか。
「21 行つたきり」はある意味うますぎるのかもしれないね。
私はさきほどコメントしたとおり、21と26どちらでもかまいません。むしろ26は一般的に受け入れがたいのだろうと思います。
あたらしき蜘蛛の囲に水つもりけり
「つもる」という表現に、水滴が集まっていく様がみえますね。新しい蜘蛛の囲に。うつくしい句です。
ぼくも21で異論ないです。
ありがとうございます。
では、【21 行つたきり】が第一席ということで。
では、時間も少ないですが全作品評に移っていきたいと思います。
ありがとうございました。
はい、異論ありません。
皆さん各作品に対する評をお願いいたします。
17「雨」
ちょっとやらしいことを言うと、この方は競作に応募しなくていいんじゃないかな。週刊俳句が依頼して書いてもらう方じゃないかと。あ、そういう問題じゃないか。
それは要検討ですね。>猿丸さん
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【01 新・露出狂】
水泳帽を小田原に忘れけり
友人の紹介といふバナナなり
先生の桃色乳首草相撲
海月赤し深層心理なる夢精
緑蔭はどこへ水道管を罅
性的興奮中のはんざきなり
冷房に老いて激しき勃起なり
びちよびちよをぐちよぐちよにして桃食ひぬ
しやぶれしやぶりつけ西瓜しやぶりつくせ
戦後とはまさしく女陰大西日
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【01 新・露出狂】
性的なことを直接テーマにすること自体は結構だと思うが、使い古された比喩をそのまま流用しているものが多く、あまり興味を持てなかった。
唯一「緑陰は」の句だけは、作者の意図通りかどうかはともかく、謎があって興味深い。
【01 新・露出狂】
先生の桃色乳首草相撲
添削しちゃいけないんだけど、「乳首桃色」のがいいと思います。草相撲をしているから男の先生ですね。その乳首が桃色だというのは面白いし、いい着眼点だなと。草相撲を性的暗喩に取ってしまうとダメですが。
【01 新・露出狂】「緑蔭はどこへ水道管を罅 」がよいと思いました。これだけ他の句と違うのですが、もっとこの世界を見たかった。てにをはの使い方にひねりがある、謎の提示プラス唐突な描写がおかしみも。どこへ、がどこへかかるのは取り方様々ですが無機質な描写でまとめてむっとする緑陰の情景をリアルに描く、不穏さも。他の句は、もう少しエロなら誰も描かない世界をお願いします。
「乳首桃色」のほうが断然いいですね。
ありがとうございます。丁寧な評で僕もうれしいです。「桃色乳首」と「乳首桃色」ではだいぶ句の色合いが異なりますね。この意図された「品のなさ」を追求するなら「桃色乳首」のままのほうがよいのかもしれません。
では。次です。
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【02 株主総会】
想定問答繰返し明易し
株主の蟻の如くに来りけり
アイスティー飲み株主の語らへる
株主の席に置かるる団扇かな
会場のマイク係の玉の汗
異議なしに異議ありと云ふ白扇子
壇上の麦茶の滴だらけなる
円団扇決議に賛意示すかな
株主の後姿の夏帽子
総会の果て冷房の音大き
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「緑陰」ですが「どこへ」の部分をもう少し突き詰めてほしかった気がします。
【02 株主総会】 現代の素材の珍しさに惹かれた。 描かれた情景にもうひとつ飛躍が欲しい。「総会の果て冷房の音大き」 映画のエンディングロールで音楽のボリュームが上がるのに似て、ドラマティックな情景になっている。
【02 株主総会】
想定問答繰返し明易し
これが一番臨場感があってよかったです。全体に、一句ずつ読むと、ちょっと言葉足らずな感じがしました。あと、意外に視点が固定している。もっといろんな角度から読むとおもしろくなると思いました。
すみません、フライング。
【02 株主総会】
題材は三鬼など新興俳句の頃から取り上げられている分野であり決して新鮮ではない、むしろノスタルジー狙いなのかもしれない。
内容としては写生なのか想望俳句なのかはともかく、一般人が想像できる範囲を越える発見や意外性はなく、すべて予定調和という感じ。
ただ、それもノスタルジー狙いの一貫として意図されたものなのかもしれないが。
テーマが統一されていることと視点が固定されていることは違うんですよね。この連作の場合、視点はちょっと客観というか、他人事として見ているような感がありました。それは俳句に特有の視点なのかもしれないけれど。
ああ、なるほど。と安伸さんの評に、気づかされる。
次です。
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【03 夏の傷痕】
炎昼のレバー貪るはとこかな
白南風の吾子の歯めきめき伸びにけり
服乱れしをんなゆるりと西瓜にのまれ
月光の乳房嬲る青鉛筆
二歳児に小児性愛を説く秋桜よ
台風や真つ赤になつてつきまとふ
なめくぢの残滓を跨ぐ団地妻
月光の石榴残してソープ嬢変死
夏の傷痕季節過ぎてもまだ癒えぬ
氷河期の気分味はふ雀かな
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【03 夏の傷痕】
「服乱れしをんなゆるりと西瓜にのまれ 」 春画のよう。中七のひらがな、字余り効果的。
「なめくぢの残滓を跨ぐ団地妻」エロチックだが、なんでもない実景でもあり。ピンクの言葉をあえて使用する試みは買う。
【03 夏の傷痕】
服乱れしをんなゆるりと西瓜にのまれ
映画「ハウス」を思いました。このエロティックさは惹かれました。
十句という分量は、作品のトーンが揃っていることがかなり重要。そういう点でこの作品みたいに、幾つかの異なる傾向が含まれているのは損。
「吾子の歯めきめき」と「小児性愛」は十句作品では両立しないと思う。
「小児性愛」とか「ソープ嬢変死」といった週刊誌の見出しみたいな語をもってきて、刺激を狙っった句は逆に一句としてのインパクトがなくなっていて、「昼のレバー貪るはとこかな」「台風や真つ赤になつてつきまとふ」といった句のほうに惹かれる。「なめくぢの残滓を跨ぐ団地妻」は成功しているような気がする。
僕もトーンが整っていない感じは損だと思いました。前の作品【02 株主総会】とは対照的ですね。
次です。今日はここまでとします。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【04 炎昼裡】
一行詩青い岬の尖端に
朝市の水が飛びつく跣かな
炎天や道は火が這ふ導火線
街中の印刷がずれ炎昼裡
炎帝に一縷の黒も許されず
大鳥居より片蔭を授かりぬ
風鈴のごと炎天に城うかぶ
蝉しぐれ寺院寺院に耳吊るし
はつきりもくつきりもゐる樹陰かな
ヨット入港夕焼けの幕が下り
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【04 炎昼裡】
「朝市の水が飛びつく跣かな」飛びつくのレトリック、いきいきとした情景描写。
「炎帝に一縷の黒も許されず」
「大鳥居より片蔭を授かりぬ」<夏陰>という古い言葉があるのでそちらのほうがしっくりする。全体に詩的イメージ。読み手を納得させうるかどうか。
わかりにくい句とわかりすぎる句が混在していると思いました。それを幅があると見るか損と見るかは人によって違うとは思います。
【04 炎昼裡】
「水が飛びつく跣」「街中の印刷がずれ」「寺院寺院に耳吊るし」など、詩としてはっとするような力のある、印象的なフレーズが登場して、素晴らしいと思う反面、若干冗長感があったり、仕上げの甘さが見受けられるところも。
一句めは作者の決意表明のようで、よくも悪くも「一行詩」という言葉が強くて重い。
そのため「炎昼裡」というタイトルが霞んでしまっている気がする。
このタイトルを含む「街中の印刷がずれ炎昼裡」がこの十句のクライマックスなので、そこを盛り上げる構成にしてほしい。
【04 炎昼裡】
街中の印刷がずれ炎昼裡
一句一句力が入っていて読ませます。。ただ、詠まれている詩情や季語の斡旋はちょっと平凡な感じがしてしまったのが残念に思いました。「風鈴のごと炎天に城うかぶ」などは、風鈴と城を逆にしたほうがいいなあ。季重なりですが。その中で、掲句は炎昼の街をありありと感じさせてよかったです。ちょっと滲んだ感じもよかったです。
ありがとうございます。
今日はこれで締めで、続きは次回にしたいと思います。
次回の審査の日程などはのちほど告知いたします。
第一席を決めるのに手間取ってしまいましたが、審査のお三方ありがとうございました。
お疲れ様でした。皆様ありがとうございました。続きはまた。ごらん頂いた方もぜひどちらかでご意見をお願いします。・ 【20 晩夏】もラストのほうにいい句が並んでました。
生駒さん、茂根さん、猿丸さん、お疲れ様でした。
二回目の審査もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、これから皆さんのコメントじっくり読み返してみたいとおもいます。また傍聴されていた皆さんのご意見もお伺いしたいです。
お疲れ様でした。
並選で触れられなかった作品、次回きちんとコメントいたします。どうぞよろしくお願いします。
「愛着と矛盾」
俳句飯と申します。この度の十句競作の選考ライブ楽しく拝見しました。
蛇足ではありますが、わたしも三作選んでみました。(ライブを参考にして)
【07 無限接点】
【17 雨】
【21 行つたきり】
の三作が良いと思います。
対象への愛着が「分かる」形で描けている点では三作とも共通していると思います。
【17 雨】は映画『アメリカの夜』のような構成を感じ、心理的に矛盾しながらも
対象へ愛着する様子に説得力・面白みがありました。
【21 行つたきり】は愛着を催させるごとき動きを視覚的に見せ、よく注意すれば「分かる」形で気持ちよくテーマ(題)との関係が浮かび上がるようでした。佳句も多いと思います。
【07 無限接点】は矛盾を孕んだ愛着という点、【17 雨】と似ていると思いました。
取り合わせの無理をあえて矛盾と呼ぶなら(通常は破綻か)、矛盾句、関係ががはっきり
しない句もあると思います。「樹液すずやか責任感のある眼球」の句は愛着を樹液に
感じる為か、関係云々抜きに成功していると思いました。赤いストロー、玩具なども
いいなと思いました。
他にもいい作はありますが、例えば【31 春雷】はしっかりと真面目に取り組んで詠まれた作品ではないでしょうか。
以上、お邪魔しました。
ちなみに私はまだ到底及ばないなと痛感しました。
テストです。こんばんは。
テストです。
コメントのテスト
こんばんは。生駒大祐です。猿丸さんが着き次第はじめさせていただきます。今回は【05 座禅】からです。
俳句飯様、どうもありがとうございます。
『アメリカの夜』!カサヴェテスですね。感情と景の振幅、なるほど。
了解です。
でははじめます。審査の皆様、読者の皆様、よろしくお願いいたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【05 座禅】
達磨さま蚊音にくしゃみ心太
仏法僧ストリートダンス木漏れ月
ヘッドフォンロックにしみる蝉の声
朝コーヒお釣りの手触れ梅雨晴間
目薬でまつげ流され戻り梅雨
炎暑かなお化け屋敷が停電し
日射病白犬家族ソフト舐め
イヤホンにうなじ取られて朝顔は
ボストンはクラムチャウダーしじみしる
日の本の達磨は起きる忍草
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
中村安伸です。
本日はこちらのIDを使用します。
どうぞよろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
【05 座禅】
パロディとか面白みが、生すぎるように感じました。意味が出過ぎて、読む方としてはちょっとしらけるところがあるかなと。
そのなかで、〈朝コーヒお釣りの手触れ梅雨晴間〉がよかったです。梅雨晴間に、手が触れた生温かさや、釣銭のひかりを感じます。ただ表現がちょっとたどたどしい。「朝コーヒ」も苦しいですね。
【05 座禅】全体に俳味があります。いくつか誰も詠んでいない素材ではっとします。形式や修辞にもう少し工夫があるといいのかも。
△「目薬でまつげ流され戻り梅雨」誰も詠んでいない滑稽さ。上から下へ述べる形は再考要でしょうか。この季語だと同じ水関係で別の意味性が出てしまうので季語は離したほうが。
○「炎暑かなお化け屋敷が停電し 」おかしみ。この倒置と季語は適確。こういった俳句の世界もあっていいです。
あ、よろしくお願いします。
一句ごとに詰め込まれた要素が多い感じがする、散文を削って一句にしたような印象。
感覚的というより知性的なとりあわせが目立つ。
素材にカタカナ語を積極的に使っていて、成功しているものも、うまく消化できていないものもある。
イヤホンにうなじ取られて朝顔は
ほのかなエロチシズムを無理のない表現で描き、本歌取りとして上手く出来ていると思う。原句からの引用として朝顔を持ってきたのだろうが、結果として良い取り合わせになっている。
みんな採ってる句が違いますね。
僕は安伸さんと同じ
イヤホンにうなじ取られて朝顔は
が好きでした。
イヤホン、まあ形のせいもあるけど、ちょっと川柳っぽく思いました。
とられる句が違うというのは、作者的にも審査的にも良いことだと思います。
では、次に行きます。
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【06 片膝】
上手より名優出でし夏芝居
新幹線改札口の花氷
地図にある川の蛇行や秋暑し
雑草を分けて水引草長し
八月大名港の見える座敷かな
片膝の膝にのりくる茄子の馬
皆人の整列したる流燈会
大広間静まり返る盆の月
銀漢の先端天主堂につき
流星の海へ海へと落ちゆけり
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【06 片膝】歌舞伎や時代物の情趣ありますね。静謐さの中に、骨太な把握を感じます。
△「雑草を分けて水引草長し」風景描写ながら、形の良さ。
○「八月大名港の見える座敷かな」実景から一歩進んで時空を超えた広がりを。季語のこの選択の手柄。
△「片膝の膝にのりくる茄子の馬」 なんでもない描写で類想あるかもだが、前の句の印象をひきずって読むと、陣営で片膝立てている戦国武士の姿も浮かんで。片膝と馬の取り合わせが成功しているようです。
俳句のうまみをよく知っている人が作っているなという印象でした。ちょっと地味だったのかもしれません。
銀漢の先端天主堂につき
が好き句です。
【06 片膝】
候補の一つでした。〈新幹線改札口の花氷〉震災後、節電の中で花氷の句は多くみましたが、いい場所を捉えました。人の往来がひっきりなしにある中、動かない花氷。溶けてゆく花氷の様を、人の動きで表しているわけです。頭の中で、早回しの映像を思い浮かべてしまいました。座五に置かれた花氷の存在感がみごと。際立ちます。〈地図にある川の蛇行や秋暑し〉感銘した句です。「蛇行」を捉えたのがよかった。地図という平面の静止した世界から「蛇行」で一気に動きが出る。肉眼では捉えられない蛇行、そのうねって伸びている様子と秋暑が合っている。〈八月大名港の見える座敷かな〉難しい季語ですが効いてます。残暑の中の涼しさを覚えている。景色も、字余りで始まる大らかで太い調子も、気持ちがいい。芭蕉の発句「五月雨をあつめてすずし最上川」を思い出しました。
型はしっかりしているが、季語のもつイメージの範囲内に収まっているものが多い気がする。
新幹線改札口の花氷
この句は意外性と実感のある取り合わせ。
地図にある川の蛇行や秋暑し
イメージはよいが、語の選択、語順もう少し工夫の余地がありそう。特に「ある」という動詞は無駄な気がする。
あと、個人的には「名優」というからには花道から出てほしい。
「八月大名」は難しいですね。農家のイメージなので「港」との取り合わせにすこし違和感がありました。
>安伸さん
高台にあって遠くに小さく港が見える農家を想像しました。
猿丸さんの候補のひとつだったということで。
僕も並選を4つ選ぶなら入っていました。
では次です。
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【07 無限接点】
マンボウのまばたき車輪の発明
対話篇からはみ出す赤いストロー
泣きながら遠くへ投げる聴診器
長袖のシャツでくるんだ父の首
始まりを思い出すまで手をゆすぐ
消火用ホースに腋をくすぐられ
樹液すずやか責任感のある眼球
へその緒を液晶画面にくぐらせる
疼痛がノートに置いた玩具にも
日本語を嗅がすと汗をかく表土
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これは議論に入っていましたね。
西日本では漁業も閑な時期「八月のトロミ」とあります。
あ、今のは6のコメントです。
猿丸さん、安伸さんの評はすでにあるので、茂根さんのご意見と付け足したいことなどあれば是非。
【07 無限接点】独特の文体を獲得している方でしょうか。遠い二つの事象をつなぐ手腕、隠喩より取り合わせに長けているとみました。
○「対話篇からはみ出す赤いストロー」言葉の選択と色彩の鮮やかさ。
○「泣きながら遠くへ投げる聴診器」
○「長袖のシャツでくるんだ父の首」
○「始まりを思い出すまで手をゆすぐ」」あるある俳句でありつつ、誰も詠んでいなかった真実。始まりとはまず手をゆすぐものであり、普遍性があるのでは。(元日や手を洗ひをる夕ごころ 芥川龍之介)の喪失感も。
△「消火用ホースに腋をくすぐられ」 少々俗なユーモアで、連用形で終わる形は川柳に多いのでそうみられるかも。
これはもういいんじゃないの?
>高台にあって遠くに小さく港が見える農家
景としてはそういう感じなんでしょうね。言葉として港の漁業のイメージと八月大名がぶつかる気がしました。
はい。時間もないので茂根さんのご意見がでたので次へ行きます。
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【08 夏休み】
甘味屋の夏暖簾より呼ばれけり
そこここに着信音や街薄暑
江ノ電の窓をはみ出す雲の峰
手作りの風鈴並ぶ無人駅
テーブルに猫の跳び乗る海の家
欄干に凭れてバナナ剥いてをり
玩具箱より溢れたる夏休み
宿題のノートに西日届きけり
ミルキーのとろんと甘く合歓の花
まだ潮の匂ひ残れる夏帽子
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【08 夏休み】視点の置き方、句の中心に持ってくるものが独特で面白い句群でした。ところどころ類想感あるのが惜しいです。
△「テーブルに猫の跳び乗る海の家」
○「欄干に凭れてバナナ剥いてをり」(川を見るバナナの皮は手より落ち 高浜虚子)ともまた違う諧謔で面白いです。
○「玩具箱より溢れたる夏休み」意外に誰も言ってなかった世界ですね。
△「宿題のノートに西日届きけり」
【08 夏休み】
甘味屋の夏暖簾より呼ばれけり
全体的に、類想感があったように思いますが、この句はきっぱりしていていいですね。お店の人に呼ばれたのか、中にいた客から呼ばれたのか、それともあんみつの霊か。夏暖簾より呼ばれけり、という俳句的レトリック、俳句っぽすぎるところがちょっとぼくは苦手ですが。でも「けり」が効いていて、きもちいいです。
【08 夏休み】
すこしなつかしい、夏休みの回想ということで場面の統一感がある。
欄干に凭れてバナナ剥いてをり
虚子のバナナの句を別の視点から見たような感じで面白い。
甘味屋の夏暖簾より呼ばれけり
「暖簾より呼ばれけり」は良いが「の夏」はちょっと不自然。かき氷など具体物で夏を言う方法もありそう。
無理のない作り方で、良い印象を持ちました。はみでるものがないと賞には不向きなのかなと思いました。
「甘味屋の夏暖簾より呼ばれけり」
が季語が効いていて好きでした。
あ、「夏暖簾」なのか。夏で切って読んでました。
類想感が惜しい作だったようです。
次に行きます。
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【09 Summer In The City】
高速道の大き片蔭町つらぬく
美少女が団扇を配る繁華街
コンビニの埋蔵アイス探査せる
太陽と笑ひの飛沫区民プール
名画よく冷え冷房の美術館
駅徒歩5分マンション全戸西日のドア
夕焼の残照に浮く高層ビル
パチンコにつぎ込み夏の星降らす
駅のホーム混み合へれども夜涼かな
列車の灯銀の鎖や夏の果
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【09 Summer In The City】 独自の文体が出来つつある方と思いました。都市風景の客観描写が良いです。
○「高速道の大き片蔭町つらぬく」この場合、先の方の「夏陰」が適確な句と違い、片蔭の語がどんぴしゃ。季語の新しい景を構築しているのでは。文体も考えられています。
△「美少女が団扇を配る繁華街」
【09 Summer In The City】
〈高速道の大き片蔭町つらぬく〉いい景だなあ。表現もうちょっと練るととてもいい句になると思います。〈駅徒歩5分マンション全戸西日のドア〉駅近なのに全戸のドアに西日があたるというのは、ゴミゴミしていない、空が広いということ。郊外の変哲もない町が見える。何の変哲もない場所ってものすごいグッとくる。写真ではそういう風景はたくさん撮られているのだけど、それを俳句で詠むのって、意外に難しいんです。とても惹かれた句ですね。
【09 Summer In The City】
素材は日常的で、把握が大胆で面白いものと、平凡なものとがあった。一句として仕上げる際に省略が不足しているものも。
高速道の大き片蔭町つらぬく
上空から見下ろしているような視点が面白い。シンプルできっぱりした句で魅力的である。
名画よく冷え冷房の美術館
「名画よく冷え」は面白い把握ながらその後は説明に終わっていて蛇足かも。別の展開があっても良かった。
良い句はすごく良いけれど取れない句もあったので惜しかった印象です。
「名画よく冷え冷房の美術館」
「高速道の大き片蔭町つらぬく」
新しいと思います。
次です。
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【10 夜 叉】
葛あらし絡繰木偶が夜叉となる
なまなまと海鳥の鳴く展墓かな
潮嗄れて天牛鳴くよ箱の中
人形を焼く栴檀の実の下に
穂孕みの風に柩を運び出す
早稲の匂ふや骨壷に骨満ちて
月代の裏戸より舟出しにけり
月待つや肉桂の枝噛みながら
蛇穴に入る時きつと宙を見る
曼珠沙華眼の筋肉の衰へて
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
茂根さんの点が入っています。
10 【10 夜 叉】二物の配合が独特で非常に巧みです。よく考えられた構成。少し平凡な喩えもあるが、全体に今までなかった世界で惹かれました。寺山に近い世界でしょうか。
○「なまなまと海鳥の鳴く展墓かな」海を臨む墓地の景の描写となりつつ、独自の世界感を醸し出す。オノマトペも独創性あり。
○「潮嗄れて天牛鳴くよ箱の中」潮という天牛では取り合わせられていなかったものを持ち込んで違和感ない景。
△「人形を焼く栴檀の実の下に」人形はよく俳句で捨てたり焼かれるのだが、季語の斡旋がよい。古来よりの情趣を加えている。
○「穂孕みの風に柩を運び出す」
○「早稲の匂ふや骨壷に骨満ちて」
△「月代の裏戸より舟出しにけり 」
○「月待つや肉桂の枝噛みながら」 異国情緒、腐敗を防ぐスパイスをこの季語に取り合わせたのは始めて見た。 古代エジプトの月とも思えて詩的広がりのある句です。。
【10 夜 叉】
この作品も候補の一つでした。確固とした世界を持っていて、強いです。ただその世界観が、どこかで見たような感じがして、5作品には残しませんでした。一番好きだったのは〈潮嗄れて天牛鳴くよ箱の中〉。「嗄れて」と「鳴く」が障るかとも思いましたが、ここでは「箱の中」を出したことによって、ずらしている。それによりとても効果的な対照となって、この方独特の世界観が顕れたと思います。
【10 夜 叉】
美意識をベースに密度の濃い構成。身体感覚に訴えるようなフレーズをとりまぜている。
文体は鋭いがバリエーションには乏しいかもしれない。十句としての統一感はある。
なまなまと海鳥の鳴く展墓かな
「なまなまと」が薄気味の悪い感覚を表現しているとともに、言葉の密度を下げて余裕のある感じに。
全体的にテンションの高い句が多いので、こういうオノマトペが上手くはまると緩急がうまれる気がする。
蛇穴に入る時きつと宙を見る
このなかではすこしゆるい。穴に入る「時」に穴とは別の「宙」を見るというのは、状況として自然でない気がする。
穴に入る「前」であれば状況がわかりやすいが。
>確固とした世界を持っていて、強いです。
同感です。
あ、ありました。
多くの作品に茂根さんの○がついています。選者によっては非常に良いところまでいく作品だったのかもしれません。
次です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【11 蝉鳴くや】
山門に気勢をあぐる蝉嵐
向日葵の千の眼の見し殺人者
被災地の牛舎に残る扇風機
虹の橋登りはじめる兎と亀
驟雨きて街に火薬の臭ひ満つ
遠雷と原発事故の光化学
金蝿よ俺の額は生きてゐる
蝉鳴くや六日九日十五日
炎天に孤独死のゼロの広報車
ブナ林にゲンパツと鳴く秋の蝉
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【11 蝉鳴くや】現代の日々の苦しみと先の大戦の頃の情景をとりまぜて表現しています。もう少し独自の、生でない言葉であればとも思います。全体に硬質な叙情があると感じました。
○「驟雨きて街に火薬の臭ひ満つ」この句もそうだが、上五が状況説明になっているのが惜しいでしょうか。実感が生む幻影。
○「金蝿よ俺の額は生きてゐる」(ヒロシマや卵食ふとき口ひらく 三鬼)を思う、いい意味です。
強い言葉が多く、それが生きているかどうかが争点でしょうね。
「驟雨きて街に火薬の臭ひ満つ」
が好きでした。
〈驟雨きて街に火薬の臭ひ満つ〉これは僕はいい句だと思いました。火薬で「音」だったら、驟雨の想定の範囲内でしたが、臭いを捉えたのがよかった。驟雨の街、たしかにきなくさい臭いがする。そしてもちろん、音も聞こえる。うん、いい句だ。
全体的には、ちょっと硬い印象でした。〈向日葵の千の眼の見し殺人者〉殺人者があざとく感じてしまった。「の」のたたみかけのあとに名詞だと、絞っていく感じで、スピード感も出て締まりますが、動詞がくると、うまくやらないとそこでもったりしてしまう。〈被災地の牛舎に残る扇風機〉中七下五のたしかな描写と上五の「被災地」という雑駁な言い方が釣り合っていないのが惜しい。被災地と一言で言っても、とくに今回の震災では、本当に様々です。読者はもやもやします。〈金蝿よ俺の額は生きてゐる〉はちょっと兜太っぽいけど、面白かった。
社会的なテーマを俳句で扱うのが難しいというのは確かだが、一方で俳句ならではと思うのは
向日葵の千の眼の見し殺人者
という句について、殺人者という強い言葉を用いて誰かを糾弾しているとともに、向日葵に見られている殺人者が自分自身のようにも受け取れるところ。
そういう曖昧さは、むしろ句としての深みにつながっている気がする。
社会性を出そうという姿勢は意義のあるものだと感じました。
安伸さん
>そういう曖昧さは、むしろ句としての深みにつながっている気がする。
に同感。
次です。
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【12 情熱諸島】
不意打ちは女人高野の自販機か
にせもののタンバリン買うかの裸族
情熱でやつめうなぎにふたをする
怪獣のかさぶたじょうの和平かな
鶏頭とするだるまさんがころんだ
仏壇を投げればぜんぶコヨーテだ
肺も骨も脳をおいぬき秋の朝
ながれぼし一円玉は浮きすぎる
横綱は枯葉をつけて現れる
青葱のしろいところは父の番
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【12 情熱諸島】どこか 不条理の表現が底流をなしています。形をもう少し練りなおせるかも、と思いました。面白いのだが、一過性なので深みがほしい気もします。それともこの軽さがよいのでしょうか。
○「鶏頭とするだるまさんがころんだ」成句を使用しながら、季語の効果。季語も子規や白泉の句を髣髴とさせて効果的。。幾たび振り向いても不気味に揺れる感じ。
△「仏壇を投げればぜんぶコヨーテだ」この内容なら口語表現でないほうが読者を共感させるかもしれません。
○「ながれぼし一円玉は浮きすぎる」壮大な季語と卑近なものの取り合わせが妙にマッチ。実感を伴いつつ、一瞬の脳内操作のようで秀逸と思いました。。
難しいところを行っている印象です。しかし成功すると名句が生まれそう。
「ながれぼし一円玉は浮きすぎる」
が茂根さんと同じで大小の景の取り合わせとして成功していると思います。
【12 情熱諸島】
ぼくはちょっとついていけなかったというか、方向がみえなかった。ごめんなさい。〈鶏頭とするだるまさんがころんだ〉がいちばんわかりやすかったです。鶏頭の量感、高さ、そんな感じだなと。
【12 情熱諸島】
シュールな取り合わせの面白さを狙いつつ、若干空回りしてしまっている句が見受けられた。
横綱は枯葉をつけて現れる
枯葉に飾られた横綱のインパクトが強く、それだけで勝負した潔さがよかった。
では次です。
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【13 地球空洞説】
行き止まりばかりではない半ズボン
萬歳に圍まれてゐる暑さかな
アルピノがアルピノを喰ふ夏館
夏草の誰かが掘つた落とし穴
生き埋めになることもある流れ星
地下道の階段濡らすラムネかな
ダダ漏れの個人情報蟻地獄
夏蝶や地球の裏側へと放つ
ラッカーとポーとウェルズと夏料理
これからは嘘だけついて端居して
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【13 地球空洞説】無邪気さに隣り合う不穏さです。文体もそれぞれ考慮していて、相当の手腕があると思いました。並列だけの句は成功していないでしょうか。
○「行き止まりばかりではない半ズボン」 無邪気さと不気味さ。相反するものを否定形でうまく表現。名詞止の投げ出した感もこの素材と内容に合って。
△「萬歳に圍まれてゐる暑さかな」少し類想あるかと。
○「これからは嘘だけついて端居して」これもこの内容に文体適確。全く普通のことを言いつつ、この季語に取り合わせると端居の季語を広げる試みとなると思います。
【13 地球空洞説】
夏草の誰かが掘つた落とし穴
夏蝶や地球の裏側へと放つ
これからは嘘だけついて端居して
これらの句が、「地球空洞説」というタイトルをつけられることによって、独立して読まれたときと別の解釈を帯びてくるという工夫された連作。
それは効果的であるとも言えるが、一句ごとの持ち味を消す部分もあって、諸刃の剣ともいえる。
「アルピノがアルピノを喰ふ夏館」
「夏蝶や地球の裏側へと放つ」
「ラッカーとポーとウェルズと夏料理」
あたりとタイトルがSFっぽい?と思ったが、その他は順当。
「ラッカーとポーとウェルズと夏料理」
の季語に良い意味で驚きました。
【13 地球空洞説】
これからは嘘だけついて端居して
端居する年齢になって、たとえばリタイアして、これからは嘘をつかないでもよい、嘘をつく必要もないわい、となるところ、「嘘だけついて」というのが面白い。こういう人、いいですね。
安伸さん
>それは効果的であるとも言えるが、一句ごとの持ち味を消す部分もあって、諸刃の剣ともいえる。
タイトルは難しいですね。
では次です。
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【14 だれにともなく】
なにがなし桑の実食うて国想ふ
水馬たゆまずやまずおなじ位置
幼ゆび指せばへんぽん蛇の衣
遠花火音待つこころ沸と湧く
燕の巣そこに迂曲の風とほる
蝙蝠のばらばら騒ぎくる逢瀬
うつしよの蛇身曝して川渡り
採血の針刺し直すアマリリス
またひとつ夕日が沈む原爆忌
蝉時雨だれにともなく黙祷し
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ああ、タイトル考える一助になりますね、それ。
どの句も型がしっかりしていると感じました。
また「なにがなし」「またひとつ」「だれにともなく」といった言葉でぼやけさせることにより、強いテーマ性を中和しているように感じた。
八月という季節に誰もが抱く自然な気持ちや気分としての「戦争」への感懐をよくとらえていると思う。
【14 だれにともなく】現代の憂鬱を描いて どこか滑稽な現実のありようが面白いです。時々、感傷があらわすぎる句も、と感じました。
△ 「なにがなし桑の実食うて国想ふ」
○「幼ゆび指せばへんぽん蛇の衣」美しいものとして詠みがちな季語を、まるで褌の形容のように。
○「蝙蝠のばらばら騒ぎくる逢瀬」日没後の不穏な世界のようで、滑稽味をオノマトペで加味していて成功しています。
相当面白いところを行っている気がしました。
「燕の巣そこに迂曲の風とほる」
などの文体良いですね。
【14 だれにともなく】
言葉の用い方、選び方に独特のセンスがある。
〈蝙蝠のばらばら騒ぎくる逢瀬〉逢魔が時という言葉があるので、蝙蝠と近いですが、臨場感あります。
〈うつしよの蛇身曝して川渡り〉恋の雰囲気が濃いですね。エロティシズムと。
〈蝉時雨だれにともなく黙祷し〉終戦日などの黙祷、たしかに「だれにともなく」。言葉にできない感情を描いている。この句が一番好きでした。
では次です。
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【15 夏の果】
本堂の無道の墨書涼しかり
イエスタデーBGМに魂迎
黒文字の水羊羹をなだれゆく
空蝉となり静脈をさらしをり
みんみんのみんともいはず夏の果
高殿を深くとよもす法師蝉
夕暮れて蝉時雨より虫時雨
田の神のビルの間や秋暑し
折鶴の白ばかりつり稲つるび
遠くより煙の匂ひつづれさせ
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