相子智恵
猫の恋シャワーの水が湯に変わる 佐藤友望
猫の恋シャワーの水が湯に変わる 佐藤友望
『むじな2021』(通巻第5号)所収「畑」(2021.11 むじな発行所)より
〈シャワーの水が湯に変わる〉とは、些事中の些事である。しかしながら、シャワーが水からお湯に変わるまでの時間ほど、待ち遠しいものもないのかもしれないな、と掲句を読んで思う。為すすべもなく、裸でぼんやり耐えているしかない、わずかな時間。
そんな時、風呂の窓の外から恋猫の激しい鳴き声が聴こえた。猫の声に気を取られているうちに、シャワーの水はお湯に変わる。
あ、もうお湯になった。そういえば、水が湯に変わる時間が短くなってきたかもしれない。もう季節は確実に春なのだ、と思うのである。
俳誌『むじな(https://mujina-tohoku575.amebaownd.com/)』は平成元年以降の生まれの東北ゆかりの俳人によって、年1回発行されている。今号の特集は「【むじな勉強会×哲学カフェ】災害と俳句」であった。これは多くの人に読まれるべき特集である。
●