相子智恵
昼寝覚喉にネックレスが重し 清水右子
昼寝覚喉にネックレスが重し 清水右子
句集『外側の私』(2020.5 ふらんす堂)所載
どきっとするような身体感覚のある昼寝覚だ。ネックレスの重さで喉が少し締めつけられた状態で目覚めた。首を締められれば人間は死んでしまうのだが、重みと共に生きていることを感じながら目覚めたのである。夢見の悪そうな昼寝覚だ。
そもそもネックレスをしたまま昼寝をしていたということは、予定のない昼下がりに自宅で一人、部屋着のままでするくつろいだ昼寝ではない。かといって、首ではなく「喉」の方に重さを感じているのだから、仰向けで寝ていることは確かである。だから、昼休みに机に突っ伏して少しの仮眠を取るようなデスクワークの場面でもない。
これは例えば恋人の家だとか、友達の家だとか、ある程度おしゃれな格好をしてきた時の、ふいに他人の家でしてしまった昼寝が想像されてくる。
あるいは自宅であっても、午後に出かける用があるのに(そんなことをしている暇はないのに)出かける格好のまま昼寝をしてしまったりだとか、あるいは逆に徹夜で遊んで、帰ってきたままの格好で寝てしまったりだとか。そこに浮かび上がるのは日常と非日常のあわいの、微妙な居心地の悪さである。
「ネックレス」という”ハレ”と、「昼寝」という”ケ”が「喉を締めつける重さ」という身体感覚で結びつき、奇妙な後味を残す一句となっている。
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