相子智恵
夏の雨ドラマにたとえれば五話の 小林大晟
夏の雨ドラマにたとえれば五話の 小林大晟
『青嵐 ― 第二回、三回 愛媛新聞「青嵐俳談大賞」作品集』(2021.6 愛媛新聞社)所載
一読、なるほどなあと思った。掲句の〈ドラマ〉とは、いわゆる連続ドラマを指しているのだろう。私たちに馴染みのある民放の連続ドラマは、現在は四半期(3カ月)が「1クール」と呼ばれ、10~11話くらいで終わるドラマが多い。
連続ドラマの5話目と言えば、序盤の”つかみ”と終盤の盛り上がりの間に挟まれた、ちょうど真ん中の回に当たり、どことなく”中だるみ”のゆるい感じが想像されてくる。
同様に〈夏の雨〉という季語も、夏に降る雨の総称であり、梅雨や夕立のようにはっきりした特徴をもっていない。ただ、きらきらした明るさを背景に感じさせて、ぼんやりとした中にも気持ちのよい”抜け感”がある。なるほど連続ドラマに例えれば、まさに5話目といったところだろう。〈五話の〉という中途半端な「の」止めも”中だるみ感”をよく表していて面白い。
言葉先行の句なのだが、実際、どこに出かけるでもなく窓の外の夏の雨を眺めながら、ドラマのことをぼんやり考える、どこにでもいる私たちの、ゆるい日常が想像されてくるところもいい。
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