相子智恵
海原をマンタの進む六月よ 遠藤由樹子
海原をマンタの進む六月よ 遠藤由樹子
句集『寝息と梟』(2021.5 朔出版)所載
今日は夏至。夏至の日は毎年、「もうこれからは日が短くなっていく一方なのか……」と、ちょっと淋しい気持ちになってしまう。地球規模で見れば、南半球はこれから日が長くなっていくわけで、そんなふうに北半球から南半球へ視点をずらして心をなぐさめながら、掲句に目が留まった。
北半球も南半球も関係なく、熱帯の広く青い海原を、マンタがまるで空を飛ぶように悠々と進んでゆく。〈六月よ〉というのは、たまたま作者がマンタを見た月だったのかもしれないけれど、やはり夏至を含む月であることが、この句をさらに美しいものにしているのではないだろうか。
六月は、日本では梅雨の季節でもあるので、水と太陽の季節ともいえる。水の中でありながら、大きな羽根を広げて悠々と空を飛んでいくようにも見えるマンタの姿に、この季節の感じが、とてもよく響きあっているように思うのだ。
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