相子智恵
入口の砂地凹んで海の家 金子 敦
入口の砂地凹んで海の家 金子 敦
句集『シーグラス』(2021.4 ふらんす堂)所載
海の家は、海水浴シーズンだけに浜辺につくられる仮設小屋で、海水浴客に、かき氷や焼きそばなどのちょっとした食事を提供したり、浮き輪などが買えたり、シャワーや着替えができたりする場所だ。
〈入口の砂地凹んで〉だから、海開き直後の真新しい海の家ではなく、夏も終わりに近い、すでにたくさんの人たちが訪れた後の、自然と入口の砂地が削られて凹んだ状態なのだろう。
〈入口の砂地凹んで〉は、何気ないようでいて、もうすぐ海水浴シーズンも終わるという一抹の淋しさと、秋の気配がそこはかとなく感じられてくる優れた描写になっている。
砂地の凹みを見ている一瞬はとても静かで、そこから、もうあまり混んでいない海の家越しに波に目をやれば、波に遊ぶ人も少なく、海もまた静かであるのだろう。
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