2021年6月18日金曜日

●金曜日の川柳〔都築裕孝〕樋口由紀子



樋口由紀子






まんじゅうに手が届かないほとけ様

都築裕孝 (つづき・ひろたか) 1944~

子ども頃、仏壇の前にはいつも何かが供えられていた。出始めの果物やちょっと高価な和菓子。広告のチラシを見て、買い物に行くような母だったが、仏壇の前だけは豊かだった。仏飯を供える前のご飯を食べて、ひどく叱られたこともあった。家の中でほとけ様は特別な存在であった。

しかし、ほとけ様は仏飯も供物も食べることができない。食べることができるのはこの世に生きている人々である。そのあたりまえのことをユーモアと皮肉を込めて、そのまま発せられている。それを素直におもしろがるところに、ひょっとしたら川柳の理想の姿があるのかもしれない。『杜Ⅱ』(川柳杜人社刊 2021年)所収。

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