西原天気
※樋口由紀子さんオヤスミにつき代打。
ボクがダメになるまでの短い歴史 中内火星
たまに耳にする「人に歴史あり」というフレーズはテレビ番組名が発祥だそうで、この言い方にむず痒くなるのは、その歴史の「結果」として、りっぱな人間像が大仰に提示されることが前提となっているからだろう。たしかに人にはみなその人の歴史があるのだが(歴史皆無なら、むしろ神話的で凄い、のだけれど)、誰もが他人様に誇れるような歴史と現在というわけにはいかない。
その点、この句は、〈ダメになる〉というのだから節操がある(ダメになる前はダメじゃなかったわけか、という意地悪はさておき)。
だいたいにして、〈ボク〉とカタカナ書きの自称の時点で、この人、かなりダメだし。
(念のために言っておくと、私が言っている「ダメ」には、かなりの愛情と好感がこもっている)
でもって、〈短い歴史〉だ。それなりに長い、というのではない。またたくまにダメになっちゃったわけで、この人、作中主体だか作者だか、まあ、なんというか、もう、かなりダメです。
『What's』第3号(2022年10月25日)より。
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