樋口由紀子
運命と一緒に下駄をぬいで行き
木村半文銭 (きむら・はんもんせん) 1889~1953
古い映画や少し以前のテレビドラマでは柳の下とか橋の上とかに下駄が揃えて置いてあって、自ら死を選んだことを意味するワンパターンの映像があった。下駄が揃えて置いてあるのはもうこの世を歩かないから必要ないということであり、自分がこの世を歩いてきたという証でもある。
古川柳以来の川柳の特質に客観性があった。下駄を通して社会への懐疑の視線と命を見据えている作者がいる。自殺者を生み出す社会を批判しつつ、そこには社会不安ととともに作者が抱えている孤独や苦痛や絶望もにじんでいる。今年も自ら命を絶った人が二万人以上もいる。私たちは今どんな社会に生きているのだろうか。来年こそは心穏やかに暮らせる年であってほしい。
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