西原天気
※樋口由紀子さんオヤスミにつき代打。
アフロでもポニーテールでもこわい 久保田紺
「こわい」が多義的、つまり、どんな意味で「こわい」かに幅があることをまず前提として、この句で言っているのは、どんな人なのだろう、と、思いを巡らせてみる。
例えば私。ポニーテールだと、きっと絶対に、こわい。だが、アフロは意外に似合ったりすると思う。あるいは、さっきまでNetflixで観ていたドラマのヒロイン。どちらも似合いそう。かつ、こわくない。サッカーワールドカップでMVPの栄誉に輝いたメッシ選手も同様。一方、このあいだYouTubeで観たサックス奏者は、ポニーテールだと、こわい。アヴァンギャルドでフリーダムな旋律と相まって、すいぶんとこわい。けれども、アフロはきっちりとサマになる。こわくない。
こう考えていくと、この句にあてはまる人物像は、わりあい希少かもしれない。だが、半面、ごそっと大量に例が見つかる気もする。
みなさんもどうぞ、いろんな人を思い浮かべて、ポニーテールとアフロを載せてみてください。恋人に、夫に妻に、ご両親に、俳人なら主宰に。などなど。
こわいかこわくないかは別としても、彼らが闊歩する街角は、なかなかにファンキーじゃないですか。老若男女、ポニーテールとアフロしかいない街角。想像するだけで愉快に暮らせそうです。
なお、作者の久保田紺は2016年逝去。
掲句は久保田紺句集『大阪のかたち』(2015年5月/川柳カード)より。
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