樋口由紀子
タスマニアデビルに着せる作業服
森田律子 (もりた・りつこ) 1950~
「タスマニアデビル」って、私の苦手な猫だ。夜行性で日中は岩穴などに隠れていて、かなり凶暴であるらしい。それにしても「デビル」っていう名前をつけるのって、どうかと思う。街で愛玩猫や犬にいろんな衣裳を着せている人をたまに見かける。可愛い系のふりふりの服が多い。しかし、ここでは「作業服」。
「作業服」だからなにか作業をさせるつもりなのだろう。が、なんのために着せるかとは書いていない。言いっぱなしの、プチンと切れたテレビ画面のように印象に残った。それでしかたなく、どんな格好になるのかと想像してみたら、思いのほか存在感があり、ありえると思った。
「タスマニアデビル」と「作業服」の言葉で作った像が不思議なインパクトをもって迫ってきた。ガチガチの批評性はなさそうだが、ほんのりとした悪意がありそうである。「はなわらび」(2014年刊)収録。
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