2016年11月7日月曜日

●月曜日の一句〔瀬戸正洋〕相子智恵



相子智恵






犬の足人間の足秋惜しむ  瀬戸正洋

句集『へらへらと生まれ胃薬風邪薬』(2016.09 邑書林)より

この犬と人間は、散歩中だろうか。ベンチに座っているのかもしれない。

足元に注目すると、当たり前だが地面は近い。草紅葉しているかもしれない。土の上には落葉などもちらほらあることだろう。そんな地面を踏みながら、秋を惜しんでいる様子が浮かんでくる。……と、ここまで書きながら、そのような背景は後から想像されてくるものにすぎない。

一読、ただただ犬の四本足と、人間の二本足がぬーっと立ち現れる。そして唐突に〈秋惜しむ〉のである。なぜ作者が犬の足と人間の足を並列に並べて注目したのかわからない。そしてなぜそこで秋を惜しんだのかもわからないのだが、どこかシュールで、ふっと笑いを誘うところがある。訳がわからないが、味があるのだ。

足を並べられて脱力している間に、ひゅっと秋は行ってしまう。

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