2012年8月25日土曜日

●ha と wa 野口裕

ha と wa

野口 裕



うめの花赤いは赤いは赤いはな  惟然

以前からこの句の最後の二音をどう読むのか戸惑っていた。hana なのか、wana なのか?

今日、たまたまネットで検索してみると「花」としているところ、「ハな」としているところと、両様の読みがあるようだ。なかには、「はさ」としているところもあった。

「は」に関する読みでは、宮澤賢治に「イーハトーブ」という造語がある。彼の出身である、「岩手」をエスペラント語風に言ったものだというのが定説になっている。愚生は、「岩手」を「いはて」と書いたから、「イーハトーヴ」を「いーわとーぶ」と読むとしたいのだが、皆、「ハ」を wa でなく、ha とよむ。

井上ひさしに、彼の伝記をもとにした『イーハトーボの劇列車』という戯曲があるが、NHK のアナウンサーも ha と発音していた。今回決定的だったのが、映画『グスコーブドリの伝記』。舞台になっている都市の名が「イーハトーブ」。映画の中で何回も ha と発音されている。どうも wa の旗色は悪そうだ。


補記

よくよく調べると、e船団の「この一句」。
http://sendan.kaisya.co.jp/ikkub09_0401.html
塩見恵介氏の鑑賞文の引用句でした。元の表記は、

 梅の花赤いは赤いあかひわさ

他に小熊座の渡辺誠一郎氏も。
http://www.kogumaza.jp/1202haikujihyuu.html
表記は、「梅の花赤いは赤いはあかひわさ」。若干異なります。

「はの」とする形もあるようです。
http://sogyusha.org/ruidai/01_spring/ume.html
口承、転記を繰り返すうちに色々なバリエーションが生み出されていったのでしょう。古典の写本の異同と同様かとも。

答えが一つしかない、というのはちょっとさみしい気もします。

は行音をいろいろ調べているうちに、ウィキペディアにとんでもないことが書かれているのを見つけました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AF%E8%A1%8C

こうした変遷の一例を挙げるなら、たとえば「あはれ」(あわれ) /afare/ という語は、当初は [aɸare] のように発音されたと考えられるが、促音が一般化すると、感極まったような時に現れる音の“溜め”が促音 /q/ として固定され、さらにその影響で [ɸ] から変化した後続音 [p] が /p/ として独立して、「あっぱれ」 /aqpare/ という新しい語形が定着するに至っている。

「あはれ」から「あっぱれ」が出ているとは!

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