〔今週号の表紙〕
第315号 鯉幟
鈴木不意
初めて下りた多摩センター駅前で見た鯉幟。一本竿に上から、矢車、吹流し、真鯉、緋鯉、子鯉の順というスタイルが一般的だから、この取り付けを見た時は違和感を覚えた。よく見ると上からの順番は守っているがポールではないので、取り付ける人もどうしたものかと考えた末のことなのだろう。
日本の意匠がテーマのシンポジウムがアメリカ開催されたことを紹介した専門誌の記事を思い出した。たしかコロラド州で緑の多いところだったと思う。館内でのディスカッションを終えると、晴れた屋外に参加者を誘い出すと日本人スタッフは持参した鯉幟を広げ始めた。参加者は何事かと見守っていたが、ポールに取り付けられた鯉幟が悠然と青空に泳ぎ始めるや大きな拍手と喝采が起こったのである。
鯉幟には子どもの成長を望む親の願いを託しているが、そこには自然と人の生活の調和が表れている。日本人の季節の意匠には幸福感を見て取れる嬉しさがある。
■すずき・ふい
1952年生れ、東京在住。「なんぢや」「蒐」所属。
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