樋口由紀子
半分のキャベツに夜がやってくる
德永政二(とくなが・せいじ)1946~
料理にもよるが余程の大家族でないかぎりはキャベツ一個を丸ごと夕食に使い切ることはほとんどない。夕方まではもう半分と一緒で一個だったキャベツは今は半分になって一人(?)で夜を迎えなければならない。明るかった外もだんだんと漆黒の闇になる。
掲句を読むまではそんなことは考えたこともなかった。残りのキャベツを何のためらいもなく冷蔵庫にほうり込んでいた。キャベツに限らず、なにもかもに対してそうだったような気がする。俳句で「ものをよく見る」のは既成概念を捨てるためだと聞いたことがあるが、川柳においては「ことをよく見る」のは日常を捉え直すきっかけかもしれない。
〈青い山ときどき通る青いバス〉〈ビニールのひもで結んである真昼〉〈マヨネーズなんかも飛んでくるらしい〉 『川柳作家ベストコレクション 德永政二』(2018年刊 新葉館出版)所収。
0 件のコメント:
コメントを投稿