誌上句会「福助」・選句一覧(1)
お待たせいたしました。選句一覧と作者です。句数が多いので、1日1題ずつ、4日間にわたって発表させていただきます。
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【福助】
さんま定食福助の真ん前で 沖らくだ
○風族○義知○天気○中村遥○恵
■さばやかれいでなくてさんまであるところがいいと思います。(風族)
■ふと顔を上げると目の前に福助が、ずっと見られていたのですね。(義知)
■坐っているのはカウンター席でしょう。油まみれの福助人形(天気)
■海近い田舎の老夫婦が営んでいる定食屋、食堂、一膳飯屋を思う。福助の飾られている店とはそんな所を思ってしまう。(中村遥)
■解り易い位の昭和的食堂の一コマ。福助もすこし煤けているのでしょう。テレビでは漫才などやっていたりして(恵)
■「めし」と暖簾のある食堂風景、だから?(痾窮)
万歳や伸びる福助足袋である sono
■そうね、綿素材の足袋は昔はのびず、窮屈な思いを。(痾窮)
福助の足のしびれを想ふ秋 痾窮
○るる○どんぐり○鈴木不意○小川春休
■頭の重みが足へ。秋思ですね。(るる)
■やさしい思いやりのような、(どんぐり)
■座り続ける福助の足が痺れないものかと考えないことはない。それをぬけぬけと言ったところが面白かった。(鈴木不意)
■下五「想ふ秋」が少し冗長かな、とも思いますが、「しびれ」という身体感覚で福助を捉えている点が良いです。(小川春休)
■言われて気がついた。作者は優しい人だなぁ。(沖らくだ)
福助はやはり耳から齧るべし 風族
○内田董一○るる○天気○痾窮○知昭
■じっくり考えた、というのではない、あっさり言い切った態度は良いです。(内田董一)
■ゲテモノ食いですが、応援したいです。(るる)
■食べちゃうんですか。意表です。あるいは鼠社会のルールを先輩鼠が後輩鼠に伝えているようにも読めます(天気)
■舐めるのなら月代(さかやき)だけど齧るのは耳。(痾窮)
■何ゆえ・・・と思ってしまった時点で、作者の術中にはまってしまいました。甘いからでしょうか、それとも苦味を味わうからでしょうか?(知昭)
福助にまなざしふたつ秋の虹 山田露結
○小早川忠義
■言っていることは何のことも無いのですが、共感。福助のその眼差しは強くもなく弱くもないまるで秋の虹のようなもの。福を呼ぶ人形の謂れは決して幸福なものではなかったと聞き及んでいます。(小早川忠義)
■福助を見ている「まなざし」でしょうね、お幸せに。(痾窮)
■当たり前のようにあるものこそ、はかなさを感じてやまない秋。(知昭)
浅黒い肌の福助出迎えるラーメン屋 風狂子
■「出迎える」は無くてOKなのでは?風景。(痾窮)
秋天の昭和に焼けた福助よ 鈴木不意
○藤幹子○正則○知昭○風狂子○恵
■福助に歴史あり。同じ時代を共有した福助への呼び掛けが哀愁。(藤幹子)
■昭和に焼けたという言い切りが良いと思った。(正則)
■「昭和に焼けた」となるとやはり空襲の焼け跡にぽつんと残された痛々しい福助の姿を思い浮かべてしまう。まさに国敗れて山河ありならぬ「国敗れて福助あり」。(知昭)
■先の大戦を偲ばせる(風狂子)
■解り易い位解りやすいが、昭和の色に焼けたというのは福助と招き猫ぐらいであろうかと(恵)
■こう詠まれると戦災に遇った福助が掘り起こされたという感じ。(痾窮)
福助をなでるゴト師や温め酒 藤幹子
○小早川忠義
■神を信じず自らの腕が全てと思われるゴト師も、幸せを運ぶものにはあやかりたいと思うのでしょうか。最後の「温め酒」が効いていると思います。 熱燗じゃ格好がつきません。(小早川忠義)
■とかくギャンブラーはゲンをかつぐもので…ゴトシは寧ろ詐欺師だけど。(痾窮)
福助の耳朶厚し豊の秋 正則
■福助の耳朶が厚いのは当然。(るる)
■福助の耳たぶの写実では…齧る位しないと句会で点は貰えません。(痾窮)
福助の横に桔梗が活けてある 天気
○信治○sono○風族○義知○山田露結○文香○小早川忠義○痾窮
■桔梗の紫とつむりの水色がきれい。「古い良い店」を描出。(信治)
■福助と活けてある桔梗は相性が抜群だということを示していて素晴らしい。薔薇とかチューリップとまで言わなくても、侘助でも女郎花でもダメ。(sono)
■桔梗とのミスマッチがいいと思いました。(風族)
■福助とこれは一輪挿しの桔梗でしょうか。特に壁掛けタイプのものだとなお良い。鄙の感じと色合いに○。(義知)
■あまりにもそのまんまの景。正直、いただこうかどうしようか迷ったのだが、あえて技巧を凝らさない技巧、という見方も。食堂の棚の上かどこかに置いてあるのだろう。福助のあの摩訶不思議な無表情と桔梗の紫色が何故か妙にマッチしている。(山田露結)
■ほっこり感。正統派の幸せ。(文香)
■その家はきっとがめつい仕事などをしないスマートな商家。その女将がある朝お客様の目に留まるように毎日の儲けを願掛けする福助の隣に桔梗を活けた。そんな状況まで浮かんできます。(小早川忠義)
■桔梗と言えば真っ先に明智光秀を想い浮かべる私、この2物ぶつかって?共通項は禿げ気味、対立項は円満vs悲壮。(痾窮)
前列の福助伏し目兜虫 内田董一
○埋図
■そう、この選句は福助大会の産物で、四句出しの八句選びと、人の句を選んで、福助八策を並べるというものだった。これらの我が八策は何の役にも立たない代物だが、並べて見れば、どうにも福助は、俺んじゃないと目を伏せる。兜太もこれが新作展なのかと呆れるしかなかろう。だが、云っておくが、我が福助八策以外の何者でもなかっぺ(埋図)
■正面から見るとチョンマゲとツノとは似ている…。(痾窮)
福助のお詫びの礼や風炉名残 小早川忠義
■「風炉名残」は私には使えない季語。福助のモデルは?との疑問↓成るほど叶わなかった…。<…文化元年頃から江戸で流行した福の神の人形叶福助。願いを叶えるとして茶屋や遊女屋などで祀られた。叶福助のモデルとなった人物も実在したと言われている。松浦清の『甲子夜話』にも登場する。当時の浮世絵にも叶福助の有掛絵が描かれ、そこには「ふ」のつく縁起物と共に「睦まじう夫婦仲よく見る品は不老富貴に叶う福助」と…(Wiki)>(痾窮)
熟れて白桃福助の頬めきぬ 近恵
○風族○文香○藤幹子
■なんとなく不気味で好きです。(風族)
■ホワイトの肌理にピンクの兆し。うまい。(文香)
■福助に血が通うようで。(藤幹子)
■「頬」ほほと読んでいいのかな?「ささ」めくとも。この2物共通項は「ふっくら」。(痾窮)
満月を出て福助のゐるところ 宮本佳世乃
○内田董一○どんぐり
■情景を放り出しています。説明が足りない。しかし、満月、福助、うまく嵌りました。(内田董一)
■何かいいことありそう(どんぐり)
■この2物も「ふっくら」。(痾窮)
福助の耳持つ人と温め酒 猫髭
○中村遥
■福耳の人と一緒に飲む温め酒はさぞ美味しいことでしょう。熱燗ではなく温め酒が叶っているかと。(中村遥)
■そういう人とのついあいは大切に、何時援助を頼む事になるかも。(痾窮)
福助の見てゐる暗き花野かな 信治
○るる○廣島屋○中塚健太○岡本雅哉
■本当は福助の目が暗くて、明るい花野を見ているはず。でも、福助には暗く見えているのでしょう。(るる)
■昔(たぶん10年以上前)「福助」というタイトルの舞台がありました。とても見たかったのに見ることができなかったので記憶に残っています。チラシに書いてあったか不明ですが、なんとも暗い笑いに満ちたお芝居のようなのでした。一読、景がばっと目に浮かんだのでいただきました。(廣島屋)
■そうか、あの目は暗い花野を見ていたのか。また美しくも寂しいものを見ていたのですね。福助の内面の凄まじさを垣間見せていただきました。(中塚健太)
■福助の笑顔に裏がありそう。(岡本雅哉)
■「暗き花野」意味深な形容。(痾窮)
福助のおでこに釣瓶落しかな 中村遥
○宮本佳世乃○るる
■いい意味での昭和。世間的、健康的。(宮本佳世乃)
■拳骨落しのパロディですね。(るる)
■季語をおちょくった。眉間の傷、旗本退屈男福助。(痾窮)
福助の始末第一ゐのこづち 義知
○真冬
■「ゐのこづち」を類推の梃に粘着力のようなものが引き出されていて、福助。(真冬)
■【牛膝】くっ付いて自ずから裕福に。 (痾窮)
■「第一」が自己主張し過ぎる。「始末に困る」ぐらいで「ゐのこづち」の取り合わせにいい味が出ると思うが。(猫髭)
秋空に福助顔といはれけり 廣島屋
○中村遥
■いいですねえ。福助顔とは。癒し顔なんでしょうね。(中村遥)
■病気でなきゃ、喰いすぎたんや。(痾窮)
ほんたうの福助のゐる菌山 文香
○宮本佳世乃○沖らくだ○天気○猫髭○知昭
■その福助が自覚しているだけなんだと思うような、ことばの面白さ。(宮本佳世乃)
■店にいるのはニセモノだったのか!菌山にいるというとぼけ方がおもしろい。(沖らくだ)
■きのこ好きとして立ち止まらざるを得ない。「菌」の妖しさが「ほんたうの福助」のなまなましさを際立たせる(天気)
■「モーニング」 に連載された漫画家伊藤静の鮮烈なデビュー作「福助」(2006年)を想起した。菌山に今なお隠棲する生きている福助のシュールなイメージは秀逸。間違っても福助を「松茸」だなどと土瓶蒸を想像してはいけない、こともないが、単なる見立てにする読みは勿体ない。(猫髭)
■じゃあいままでの福助は何だったのと言いたくなりますが、「菌山」で一句が締まりました。新しい、真の福助が茸のように続々と生まれようとしているかのよう。(知昭)
■福助でなくても句が成立してしまう。(るる)
■菌山=きのこやま、と読むのでしょう。なら、福助=松茸。(痾窮)
近未来都市の福助服透ける 岡本雅哉
○埋図○風狂子○恵
■今我々は昔近未来都市として設計された田舎にいるが、だれも居ないじゃないか。昔看板小僧だった福助も、今では、牛みたいになっちまって、ぎゅうっと透けちまった。もう。(埋図)
■きたる未来をユーモラスに(風狂子)
■近未来都市に福助は似合わないなあと思いきや、透ける服。「フクスケ」の繰返しが可笑しい。狙いに上手く嵌りました(恵)
■あんまり有難く無い、メタボ腹みせられるのは。(痾窮)
■「透け透けの服で福助未来都市」と落とさないと理が付き過ぎるのでは。(猫髭)
灰色・灰色の庭園通り純金福助 埋図
■配色は金銀細工風だが…解らない。(痾窮)
■冒頭の「灰色・」がくどいし、福助人形の歴史から言えば「金福助」が正しいが、イメージが面白い。(猫髭)
笑いたくなし十月の福助は 知昭
○sono
■笑いたくない気分と十月の福助が釣り合っています。(sono)
■私は年中笑いたいけど笑えないだけど。(痾窮)
棒を見せれば夜の福助棒を見る 真冬
○内田董一○文香○藤幹子○廣島屋○沖らくだ○天気○中塚健太○猫髭
■奇想が明確です。棒は棒、体温のある福助。(内田董一)
■福助さん、気をつけないと目をまわされちゃうよ。(文香)
■夜を良しととるかどうかでしょうね。私は好きです。棒も。(藤幹子)
■棒を見せれば・棒を見る、という繰り返しが何やら深い意味を持つようで、実は意味などないようで、最後まで悩みつつ、いただきました。(廣島屋)
■動くはずのない眼がちろっと動いたらちょっと怖い、でもやってみたい。(沖らくだ)
■「棒」と「夜」の茫漠感(天気)
■世界の全てに対して受け身で、かつ虚ろであるという福助の性質(性格?)が、棒という純一な物体を見せる実験によって証明されたような句だと思いました。(中塚健太)
■不気味で面白い。「棒を見せれば棒を見る夜の福助」と落とした方がわたくしは秀逸だと思う。(猫髭)
■福助って名前の猫?(痾窮)
福助を戻して冬の支度了 小川春休
○山田露結○真冬○岡本雅哉
■冬支度のついでに福助の置いてある棚も拭いたのだろう。冬支度が終わって福助はいつもの場所へ。やや「作ってる」っぽいわざとらしさは感じるのだが。(山田露結)
■では戻す前は何をしていたのか、福助。人間の都合に飲み込まれ居場所定まるのね、福助。(真冬)
■慣習としてのルーチンワークって美しい。(岡本雅哉)
■店先に在ったのを店内に、かな?簡単な冬支度。(痾窮)
福助の肩の重荷を解いてやる 中塚健太
○宮本佳世乃
■やさしい。(宮本佳世乃)
■さては、何か商売繁盛のアイデアが!?(痾窮)
福助の厚顔無恥に秋の色 るる
○信治
■「厚顔無恥」になるほど。(信治)
■そう言われれば流行ろうが閑古鳥が鳴こうが同じ表情。(痾窮)
福助の句会盛り上げ月天心 どんぐり
○天気
■句会当番として、ありがたくいただきます(天気)
■「週俳突発句会」です。(痾窮)
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