2014年3月5日水曜日

●水曜日の一句〔加根兼光〕関悦史



関悦史








鳥類に小さき頭蓋日雷   加根兼光

「鳥類」は博物学か生物学の分類を示す語彙であり、花鳥趣味や、個別の鳥の生命感とは一端ひややかに距離を置いている。

そして「小さき頭蓋」でひややかな手つきのまま個体の肉感に分け入り、「日雷」で生命が宿る。生命の誕生には雷が一役果たしたとの説があることを思えば理に近づくが、「日」の明るさが空間的な見晴らしを確保しており、一句は雷一閃の劇性にばかり集中することはない。

鳥は自分の頭蓋が小さいことも知らないし、雷と生命の関わりを思惟することもない(はずだ)。

一度距離を置いた後で生命感を引き出すことで、鳥類の無垢さと可憐さが浮き彫りになる。さらに、死にやすさ、死なせやすさへのやや偏執性を帯びた視線も、この句は同時に感じさせる。図鑑や解剖図、死体標本のコレクションに魅入られたとき特有の、不気味さを経た生命への接近の魅惑を捉えた句といえる。


句集『句群po.1―半過去と直接法現在として、あること』(2014.2 マルコボ.コム)所収。

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