2014年3月7日金曜日
●金曜日の川柳〔岡橋宣介〕樋口由紀子
樋口由紀子
切符売りのおばあさんの切符はぬくいな
岡橋宣介 (おかはし・せんすけ) 1897~1979
首から布切れの袋をぶら下げて、指先のあいた手袋をして、切符を売っていたおばあさんがいたような記憶がおぼろげながらある。掲句から人と人とのつながり、人のぬくもりがじんわりと伝わってくる。
しかし、今は切符のぬくさを嬉しいと思うような感覚を失ってしまっているように思う。映画館でぬくいチケットもらっても、コンビニでぬくいおつりを受け取っても、なんとも思わない。それよりも気持ち悪いと思うかもしれない。おばあさんから手渡されたぬくい切符に、ぬくい気持ちを感じて、心が温かくなったのは、遠い昔の出来事になってしまった。
先日、券売機の前で立ちつくしておじいさんに出会った。みんな、急いでいるので、どんどんと追い抜かれていく。切符売りのおばあさんがいたらそんなことはなかった。
岡橋宣介は新興俳句の理念に共鳴して、日野草城の「旗艦」の同人でもあった。昭和24年川柳誌「せんば」を創刊し、多くの川柳人に影響を与えた。
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