2016年9月5日月曜日

●月曜日の一句〔生駒大祐〕相子智恵



相子智恵






ややありて手花火を手放しにけり  生駒大祐

同人誌『オルガン』6号「夕刊」(2016 summer)より

美しい句だと思った。

手花火が終わった後、暗闇の時間がややあってから、それを手放す。花火が終わった後の、静かな余韻の時間が詠まれている。

〈手花火〉を〈手放す〉。繰り返される「手」の持つ情感が活きている。手花火という何気ない名称が、こんなにも切ない気分をもたらすとは思ってもみなかった。「捨てる」ではなく「手放す」を選んだことによって、名残惜しさが滲み出た。

〈ややありて〉の「て」も含めれば、「て」という音が全体のアクセントとなって心に引っかかりをもたらし、また〈手花火を手放しにけり〉の破調による微かな引っかかりも、名残惜しさを感じさせているように思う。

花火を直接詠むよりも、花火の美しさを感じさせる句である。

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