橋本 直
鴇田は、単純な現実を、複雑に書いている。そのために、中心的な価値観の見えない今という時代の気分に、肉迫している。一方、万太郎は、複雑な現実を、単純に書いている。そのために、普遍的な詩情を持ちえている。鴇田の句は「実」から出発して「虚」に至っている。対照的に、万太郎の言葉は、「虚」から始まって「実」に着地している。そのように言い換えることも出来るだろう。非常に面白く、かつ実作者の為になる万太郎論と思う。
髙柳克弘『どれがほんと? 万太郎俳句の虚と実』慶應義塾大学出版会/2018年4月
引用は同書168頁から。現代の若手の代表作家として鴇田智哉の句を挙げ、万太郎の句と比較しているくだりの一部。そんなに分量かけているわけではないが、面白い指摘。
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