相子智恵
シャツの裾だんだん重き水遊び 安藤恭子
句集『とびうを』(ふらんす堂 2019.7)所載
子どもが水鉄砲で水を掛け合ったりして遊んでいる。最初は水鉄砲を打ったり走って逃げたりするのが楽しくて、時間を忘れて、きらきらした水の束だけに集中している。シャツの裾であって、ズボンの裾などではないから、川やビニールプールなど足元から水に入る遊びではなく、水鉄砲のような遊びを想像した。
それが〈シャツの裾だんだん重き〉で、徐々に裾の重さに気づいてくる。シャツの重さの方が気になるようになってきたら、そのうちシャツの冷たさにも気がついて、水遊びだけに没頭していたひとときは過ぎてゆく。遊びは終わりに近づくのだろう。
掲句は大人になってから、子どもの頃の水遊びを思い出したのかもしれないなと思った。子ども時代を思い出す時、遊びそのものの記憶よりも、なぜかこのような触感などの感覚が残ることが多いように思う。懐かしくてちょっと切ない一句。
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