2019年8月15日木曜日

●木曜日の談林〔三輪一鉄・杉木正友〕浅沼璞



浅沼璞








 蛍をあつめ千話文をかく 一鉄(前句)
月はまだお町の涼み花筵
  正友(付句)
『談林十百韻』下(延宝3年・1675)

まずは不易&流行の観点からーー

前句は車胤(しやいん)の故事「蛍雪の功」の不易をベースに、千話文(ちわぶみ)つまり痴話文(艶書)の流行を詠みこんでいる。

付句は花月の不易をベースに、お町(ちやう)つまり御町(官許の遊里)の流行を詠みこんでいる。



まだ月の出ない、夕涼みの花茣蓙(花模様の筵)で、蛍の光をたよりに艶書をものする遊女。



夏の恋の付合ながら、花の定座(二ウラ13句目)へと月をこぼしてもいる。

(「花筵」は雑の正花。「涼み」とあわせて夏の花の座となる。)



花の座の月は蕉門歌仙(初ウラ)で知られているけれど、談林百韻でもなされていたのであった。

芭蕉の式目解釈の革新性を云々するのであれば、談林くらいは多少チェックしておくべきだということの、ひとつの証左となろう。

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