浅沼璞
蛍をあつめ千話文をかく 一鉄(前句)
月はまだお町の涼み花筵 正友(付句)
『談林十百韻』下(延宝3年・1675)
まずは不易&流行の観点からーー
前句は車胤(しやいん)の故事「蛍雪の功」の不易をベースに、千話文(ちわぶみ)つまり痴話文(艶書)の流行を詠みこんでいる。
付句は花月の不易をベースに、お町(ちやう)つまり御町(官許の遊里)の流行を詠みこんでいる。
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まだ月の出ない、夕涼みの花茣蓙(花模様の筵)で、蛍の光をたよりに艶書をものする遊女。
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夏の恋の付合ながら、花の定座(二ウラ13句目)へと月をこぼしてもいる。
(「花筵」は雑の正花。「涼み」とあわせて夏の花の座となる。)
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花の座の月は蕉門歌仙(初ウラ)で知られているけれど、談林百韻でもなされていたのであった。
芭蕉の式目解釈の革新性を云々するのであれば、談林くらいは多少チェックしておくべきだということの、ひとつの証左となろう。
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