2019年8月9日金曜日

●金曜日の川柳〔星井五郎〕樋口由紀子



樋口由紀子






いつ使えばいいかわからぬ方程式

星井五郎

方程式と急に言われても、すぐに思い浮かばない。方程式を解きなさいという設問があったことの方が覚えている。さて、どんなものだったのか。勉強したくないとき、定期テストの前日など、なんで、こんなと覚えなければならないのかと腹を立てていた。こんなことを学んでも何の役にもたたないとも思っていた。なのに、今になってもっと勉強しておけばよかったと思うことがたびたびある。

実生活に役に立つことだけに価値があるのではないということをうすうす気づいて、だんだんとわかりだしたのは学校を卒業しただいぶ経ってからである。そういうことを含めて教えてくれたのが、考える訓練してくれたのが、方程式に代表されるものだったのかもわからない。結論だけがすべてではなく、過程を大事にする。星井さんに無意識に使っているのですよと伝えたい。いや、そんなことがわかっているから一句にしたのだろう。「触光」(61号 2019年刊)収録。

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