樋口由紀子
今踏んだ落ち葉は昨日猫だった
朧
ふと踏んでしまった落ち葉がニャーと鳴いたのだろうか。それとも足裏の感触で猫だと思ったのだろうか。昨日は猫だったが、今日は落ち葉になっていたと、独自の語り口でひょいとそんなことがありそうな場に連れていく。
連れていってくれるだけで特に意味はないだろう。俯瞰しているのでも、前後に物語があるというわけでもなく、かといってニヒリズムに陥っているのでもない。感情移入する必要はない。落ち葉を昨日は猫として生きていたと感じただけなのだ。不思議な感覚である。明日は何になっているのだろうか。『卑弥呼の里誌上川柳大会集』(2021年刊)収録。
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