2022年8月15日月曜日

●月曜日の一句〔半澤登喜惠〕相子智恵



相子智恵







芋蔓を食べしが長寿の先頭に  半澤登喜惠

句集『耳寄せて』(2022.5 金雀枝舎)所収

芋の蔓まで食べていたというのは、戦中のことなのだろう。重い内容だが〈長寿の先頭〉に俳味があり、精神の強さを感じさせる。きっとたくましく、ひたむきに生きてきた作者なのだ。本書の中には他にも〈戦中の少女は傘寿豆の花〉〈軍馬飼料の草刈りし日よ黒き手よ〉という句もあった。奥付によれば作者は1931年生まれの91歳だから、傘寿の句は10年ほど前に詠まれたものかもしれない。

そういえば角川「俳句」2022年7月号の三村純也氏の句の中に、〈春愁や戦後生まれも喜寿となり〉という句があった。三村氏の句には〈戦後生まれの会、「野分会」を立ち上げしより幾年ぞ〉の前書きがある。「野分会」は俳誌「ホトトギス」の、戦後生まれの若手を育てる研鑽句会で、1977年に故・稲畑汀子氏と三村純也氏が始め、今も続いている。こちらは汀子氏追悼の一句である。

戦後生まれは77歳になり、戦中の少女は91歳になった。終戦の日が終戦の日であり続けるためには、想像力をもつことがますます大切になるのだと、ひしひしと感じる。

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