2020年6月7日日曜日

〔週末俳句〕みが深い 喪字男

〔週末俳句〕
みが深い

喪字男



夏頃に結核菌に感染していた。と書くと結構な問題のようだけど、結核は感染と発症は別で、感染は「下手すると発症するかもしれない」という状態らしい。というわけで半年間の予防内服が始まった。その途中でコロナ肺炎が流行して世界はこんなことになったわけだけど、僕はすでに結核菌と格闘しているわけで、他の人より Here comes a new challengerみが深かった。

 
さて先日、半年の予防内服期間が終わったので最後にCTを撮りましょうということになって、CTを撮ったところ、左の腎臓に腫瘍が見つかった。良性か悪性かはこれからの検査次第になるんだけど、下手すると左の腎臓をまるっと摘出しなければならないらしい。

怖い感じのお医者さんが「何か質問はないですか?」と仰ったので「小便のキレが悪い」と言ったら「関係ないですね」と冷たく突き放された。

ほんと Here comes a new challengerみが深い。


2020年6月5日金曜日

●金曜日の川柳〔広瀬ちえみ〕樋口由紀子



樋口由紀子






遅刻するみんな毛虫になっていた

広瀬ちえみ (ひろせ・ちえみ) 1950~

遅刻して、あわてて部屋に入ったら、仲間はすでに毛虫になって、動き回っていた。驚きと同時になにやら謎めいている。それよりもまた一人だけ出遅れてしまった。いつもそうだ。まだ間に合うだろうか。しかし、よりにもよって「毛虫」だなんて、どうすればいいのか。

なぜ「毛虫」なのかと聞くのは野暮というものである。実物の毛虫を思い出してみるといい。毛むくじゃらで全身をくねってせかせかと動く姿を想像するだけでおかしくなる。だから、取り残され感は半端ではないのに、どうも頓着している風でもなく、すぐに毛虫になっていそうである。

川柳は同一平面上で意味の流れを途中でずらし、句意を別方向にはぐらかすことによって、言葉の不思議さや可笑しさを表出する。お腹にストンと落ちる、川柳はこうでなくてはと思わせる句集が出た。『雨曜日』(2020年刊 文學の森)所収。

2020年6月3日水曜日

●浴槽

浴槽

浴槽から海へ流れて空白つづく  林田紀音夫

青梅雨の昼の浴槽あふれしむ  正木ゆう子

浴槽の玻璃のむかうに蛾の眼玉  横山白虹

浴槽にマネキンの足神無月  皆吉司

浴槽にめつむるあまた歯を抜き来て  西東三鬼


2020年6月2日火曜日

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2020年6月1日月曜日

●月曜日の一句〔河野美千代〕相子智恵



相子智恵







もろもろの管抜き去つて死者涼し  河野美千代

句集『国東塔』(2020.6 コールサック社)所載

その瞬間に〈死者涼し〉と思えるということは、延命処置なのだろう。命をながらえるために、体とつないでいた人工呼吸器や胃ろうなど〈もろもろの管〉を抜いたのだ。

〈死者涼し〉は、突き放しているようでありながら、静かに優しく、この人を悼んでいるように私には思える。生きてほしいという他者の(自分の、かもしれないが)願いゆえの治療から解き放たれた安らかな涼しさ。

遺された者たちがそれを肯定するのには時間がかかるのかもしれないが、看護師だったという作者は、この死者の本当の思いを知っていたのかもしれない。