2021年9月20日月曜日

●月曜日の一句〔北山順〕相子智恵



相子智恵







月の客電柱数へつつ帰る  北山順

句集『ふとノイズ』(2021.7 現代俳句協会)所載

この月見の客は自分のことなのだろうと思った。〈月の客〉の”ハレ”に比べて〈電柱数へつつ帰る〉が、あまりにも”ケ”で、その落差に脱力し、妙な虚しさになんだか笑ってしまう。

みんなで月見を楽しんだ後の、ひとりの帰り道。やや見飽きた月を見上げながら、月の宴で友人らと話したことなどをぼんやりと反芻しながら帰っているのだろう。月の前には、電柱。気づけば月からは目が離れ、電柱の数を数えながら帰っていた。

現代のあわれが描かれていて、今の雪月花というのは、案外こんな感じなのかもしれないなと思う。

2021年9月17日金曜日

●金曜日の川柳〔佐藤幸一〕樋口由紀子



樋口由紀子






インパラの跳ねる月夜に出てみぬか

佐藤幸一(さとう・こういち)

月夜はウサギだと思っていた。しかし、掲句は「インパラ」。インパラはウシ科の哺乳類でアフリカの草原に群れを作って生活している。ウサギより大きく、雄はねじれた角を持っている。「インパラ」にしたところに反骨精神を感じる。誰に向かって「出てみぬか」と言っているだろうか。自分自身だろうか。「出てみぬか」に親近感と迫真性がある。

「インパラの跳ねる」、それも「月夜」が現出し、言葉でまぼろしをみる。「跳ねる」「出て」の動きも視野が拡張していくような感覚になる。この二つの事柄の組み合わせが響き合い、そこは別の世界と繋がっているような雰囲気を醸し出している。

2021年9月15日水曜日

●西鶴ざんまい #15 浅沼璞


西鶴ざんまい #15
 
浅沼璞
 

肝心の軍の指南に利をせめて    西鶴(七句目)
 子どもに懲らす窓の雪の夜     仝(八句目)
『独吟百韻自註絵巻』(元禄五・1692年頃)
 
 
八句目は懐紙でいえば初折の端の句になるので、折端(おりはし)と呼びます。
 
四句目より雑が続きましたが、ここで冬(雪)の句となります。

 
 
句意は「我が子にスパルタ教育する窓の雪明りの夜」といった感じでしょうか。

前句の「指南」の対象を我が子に限定しての付けです。
 
(下七には「蛍雪の功」の故事がかけてあるようです。)

 
自註を引くと――俗言に「いとしき子には旅をさせよ」といへり。若年より其身をかためずしては、自然の時の達者、成(なり)難し。是によつて、かたい親仁が氷をくだきて手水につかはせ、寒夜の薄着をならはせける――。

今でも「かわいい子には旅をさせよ」と言いますね。
 
「自然の時の達者」というのは「不慮の際に発揮する能力」のこと。
 
「かため」「かたい」「氷」はもちろん縁語です。

よって自註を意訳すると、――若い時から心身を整えなければ、万が一の時、能力を発揮できない。だから氷のように厳格な親父は氷を砕いて手や顔を洗わせ、寒夜の薄着を伝授するのである――てな感じです。

 
では最終テキストにいたる過程を想定してみましょう。
 
いとしき子とて氷の親仁  〔第1形態=氷の親仁くん〕
    ↓
 子どもに懲らす窓の雪の夜 〔最終形態=窓の雪さん〕
 
前句「利をせめて」(≒理詰めで戦法を伝授して)から「氷の親仁」へ。その氷(冬)から「窓の雪」へ、という想定です。

 
さて、ここまでの表(おもて)八句が序破急の序段。
 
俳書によっては「蛍雪の功」のような故事付けを序段に嫌うものもありますが、俗語わけても俚諺好きの鶴翁にそれを言うのは野暮というものでしょう。
 
「そやで、粋(すい)らしき事言うてくれるな」
 
はい、でもほかに二つ、気になる箇所が……。
 
「……」
 
またまた気配消して、あの政治屋、マネてません?

2021年9月12日日曜日

【新刊】『人工知能が俳句を詠む: AI一茶くんの挑戦』

【新刊】
『人工知能が俳句を詠む: AI一茶くんの挑戦』

川村秀憲、山下倫央、横山想一郎著/2021年7月/オーム社

2021年9月11日土曜日

【新刊】谷口智行『窮鳥のこゑ 熊野、魂の系譜 3』

【新刊】
谷口智行『窮鳥のこゑ 熊野、魂の系譜 3』

2021年8月1日/書肆アルス