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2021年2月14日日曜日

【週末俳句】隔離の日々 小津夜景

【週末俳句】
隔離の日々

小津夜景


いま東京のマンスリーマンションで「帰国者の自主隔離」にいそしんでいる。いつもは海のある田舎でのんびり生きているから、都会のマンションに籠っているのがつらい。

公共交通機関をつかうことも、喫茶店やレストランに入ることもできない。家のまわりを散歩するのは許されているものの、歩きながら「海はどこ…どこにも海がないよ…」とつぶやいている。

そんな散歩の途中で、ちょっといい感じの寺の前を通った。見ると吉祥寺とある。吉祥寺という街は、この寺のまわりに住んでいた住民が、火事のあとに移り住んだことでその名をもつらしい。なるほど。



ときどき知人から「マンションでなにしてるの? ひまでしょ?」といった連絡が来る。はい。ひまです。ただしひまなのは気分の話。用事がなければこのコロナ下に帰国などしないのであって、やるべきことはたくさんある。

そのうちのひとつが拙著『いつかたこぶねになる日』の版元である素粒社の北野さんが企画した、池澤夏樹氏とのオンライン・トークイベント「小津夜景って何者?」だ。すごいタイトルですみません。自分でも恥ずかしくてもう。もっともこのイベントは帰国の理由とは無関係で、しばし日本に帰りますと北野さんに伝えたら即座にイベントを入れてきたのだった。池澤氏も北海道という海外にお住まいなので、このたび東京でお目にかかれるのはまったくの偶然。ふしぎなことって起こるんだなあ。詳細はこちら。チケットを購入すると、当日無理な方も1週間のアーカイヴ視聴ができます。

2020年6月7日日曜日

〔週末俳句〕みが深い 喪字男

〔週末俳句〕
みが深い

喪字男



夏頃に結核菌に感染していた。と書くと結構な問題のようだけど、結核は感染と発症は別で、感染は「下手すると発症するかもしれない」という状態らしい。というわけで半年間の予防内服が始まった。その途中でコロナ肺炎が流行して世界はこんなことになったわけだけど、僕はすでに結核菌と格闘しているわけで、他の人より Here comes a new challengerみが深かった。

 
さて先日、半年の予防内服期間が終わったので最後にCTを撮りましょうということになって、CTを撮ったところ、左の腎臓に腫瘍が見つかった。良性か悪性かはこれからの検査次第になるんだけど、下手すると左の腎臓をまるっと摘出しなければならないらしい。

怖い感じのお医者さんが「何か質問はないですか?」と仰ったので「小便のキレが悪い」と言ったら「関係ないですね」と冷たく突き放された。

ほんと Here comes a new challengerみが深い。


2020年5月31日日曜日

〔週末俳句〕土産屋のコースター 小津夜景

〔週末俳句〕
土産屋のコースター

小津夜景





近所のお土産屋さんで、地元の120年前の風景写真をコースターにしたものを買った。ジャン・ジレッタ撮影。



海沿いの目抜き通りは120年前から人で賑わっていたようだ。この通りは「英国人たちの散歩道」と呼ばれるのだけれど、やっぱり英国人が多かったのだろうか。海の上の建物のはカジノ。1944年にナチスが攻めてきたときに、鉄骨が気に入られて丸ごと略奪されたそうで、現在は浮橋だけが残っている。

今日の海は、まあまあの人出。でも観光客がいないからちょっと寂しい。

2020年5月17日日曜日

〔週末俳句〕使いきる 西原天気

〔週末俳句〕
使いきる

西原天気



インクひとびん使い切るのはうれしいもので、それは、ひとつには、その色を気に入り長く付き合えたことのうれしさであり、また、ひとびんぶん字を書いたのだなあ(かなりの文字数です)という感慨のようなもの。

万年筆で書いたもののなかには俳句も含まれ、それは他人様の句であったり、自分の作句であったり(かなりの句数です)。

というわけで、私にとって、俳句とは、手もて為すもの、と言えそうです。

2018年11月18日日曜日

〔週末俳句〕スコッティーな些事 西原天気

〔週末俳句〕
スコッティーな些事

西原天気

ピクルスを漬けてみたり。


酉の市を歩いたり(下写真はその夜の花園神社の裏側)〔*1〕


『ユプシロン』〔*2〕創刊号が届いたり。


猫がいたり。


『はがきハイク』〔*3〕に切手を貼ったり。




〔*1〕この日の模様は、こちらにも。
https://weekly-haiku.blogspot.com/2018/11/604.html

〔*2〕岡田由季、小林かんな、仲田陽子、中田美子、4氏による同人誌。創刊号は2018年11月1日発刊。

〔*3〕笠井亞子+西原天気による俳誌。投函はもうすこし先。

2018年11月11日日曜日

〔週末俳句〕鳥の嵐 木岡さい

〔週末俳句〕
鳥の嵐

木岡さい


三日月を古い駅舎で手に入れた。

フランスのロックバンド「OISEAUX-TEMPÊTE」 (鳥の嵐)の公演に出かけた。会場は人口1900人あまりの小さな村モーベックの旧駅舎。長いあいだ廃駅になっていた建物に約20年前、文化振興協会がふたたび息を吹きこんだ。いまでは年中さまざまなイベントが行われている。



「鳥の嵐」でギターやキーボード、サックスを演奏するのはフレデリック・オーバーラント。彼を知ったきっかけは詩人のクリストフ・マノンで、2人のパフォーマンスをよく最前列で鑑賞した。オーバーラントの演奏に合わせマノンが詠う。例えばこんな詩を。

なにを今さらと愛。    おしむすべ分からず
に。     先のばしするお終い。  焦がしたあの
時めき。    なつかしくて切ない。   ここまで
かけた愛。     閉じこめろ永遠に。  しまつて
その心に。  のこりの毒がまわり。  ゆっくり
とてもゆっくり。    ぼくらを。      殺す。


多才なオーバーラントは写真家でもある。わたしが抱きしめるレコードのジャケットを指さして言った。
「その三日月とったの俺だよ」


2018年11月4日日曜日

〔週末俳句〕ちょういいぐあいに古い 西原天気

〔週末俳句〕
ちょういいぐあいに古い

西原天気

散歩していて、ちょういいぐあいに古いビルに出会うと、カメラを向けてしまいます。自分にとってのフォトジェニックな物件。誰にとっても、というわけではないかもしれないけれど。


2018年10月28日日曜日

〔週末俳句〕本をひらく 西原天気

〔週末俳句〕
本をひらく

西原天気

毀れた「?」を発見。誤植? 文字欠け? マイクル・コリンズ『フリーク』(創元推理文庫/1990年)。


某日、閒村俊一装幀集『彼方の本』刊行を祝ふ会へ。口絵に多数書影。エッセイと俳句も入った、おもしろい本。





2018年10月21日日曜日

〔週末俳句〕Driving Home 西原天気

〔週末俳句〕
Driving Home

西原天気

2018年10月14日日曜日

〔週末俳句〕10月の入り江 木岡さい

〔週末俳句〕
10月の入り江

木岡さい


臀部をすくい二の腕を引っ張り岩に押し付けた。切りたった石灰石の崖を見上げる入り江で泳いでいた時だ。盛り上がる波の緩やかさに油断していた。身体は一瞬、波になされるがままになった。

子どもがいない10月の海岸。大人たちは、持参のパラソルの下で寛いだり、潜ったりしている。ガツガツとした岩場を行く、こんがりと日焼けした姿はどれも、映画 『太陽がいっぱい』のアラン・ドロンに見えるのが不思議だ。夏の名残りがまだ腰を据える空気の層の奥に、マルセイユの高層ビルが小さくかすむ。

陸に上がると、海水と混じりあった血が左肘に広がった。荒い岩肌で切ったらしい。近くの男性が血に気づき、ティッシュを差し出した。白い野球帽にサングラス。ひとりで時々この海岸へ来るという。「ミストラルが吹かない日も、このあたりの波の流れは強いからね」と、サングラスをずらし微笑んだ。

男性と30分ほど話し、読みかけの本を開いた。変哲もない日。みんな裸ということ以外は。




2018年10月7日日曜日

〔週末俳句〕入場無料 西原天気

〔週末俳句〕
入場無料

西原天気


入場無料なのに見応え充分・内容充実の博物館・記念館は、都内にいくつもあるらしく、四谷三丁目の消防博物館もまさにそうでした(東京近郊に暮らしていながら、なおかつここはクルマでしょちゅう通るのに、入ったのは初めて)。

江戸火消しの史料展示やら明治期の消防機械化やら。なかでもミニチュアを点在させたパノラマに(なぜか)心惹かれました。



そこから程近い四谷於岩稲荷田宮神社と陽運寺も入場無料。日本一有名な幽霊、お岩さんゆかりの寺社。



この日、知り合いの吟行にくっついていったのですが、俳句は作りませんでした。火事は冬の季語だし、幽霊は夏の季語だし。※ここ、真に受けないでくださいね。為念。

句会も遠慮して、ひとり散歩を続けました。

散歩はおおぜいでなんだかんだ言いながらも愉しいし(今回の消防博物館などはとりわけ、そう)、ひとりも愉しい。

2018年9月23日日曜日

〔週末俳句〕水辺の散歩 西原天気

〔週末俳句〕
水辺の散歩

西原天気



京・鐵砲洲あたり。高橋(たかばし)から南高橋(1932年開通。人道橋の鋼鉄トラス橋としては都内で2番目に古い)を望む。むこうに見えるのは亀島川水門。こちらは1968年竣工。

その前の週末には、神奈川県葉山町で森戸川。このところ、川の近くで過ごす機会が多く、気持ちが潤っています。

2018年9月16日日曜日

〔週末俳句〕週末鳥見 岡田由季

〔週末俳句〕
週末鳥見

岡田由季



昨年、小津夜景さんへの海鳥のインタビューを担当したことをきっかけに、野鳥を見ることにはまった。

最初は、散歩の途中で、すこし注意して見るくらいだった。それが徐々に近隣の野鳥スポットに出かけるようになり、今年2月に愛犬を失ってからは、その寂しさもあり、予定のない週末はたいてい、ため池や海辺、すこし遠くの公園へ鳥を見に行く生活になった。

ひとことで鳥を見ると言っても、いろいろな方法がある。小津夜景さんは、いつも手ぶらで見に行かれるそう。そういう詩的アプローチにも憧れるけれど、私にはできず、双眼鏡と、望遠のデジカメを持っていくことになる。そうでないと、まず何の鳥かわからない。


鳥を見つけたら、なるべくその鳥の特徴がわかる写真を撮り、家に帰って調べる。身近な環境にも、思った以上に多種の鳥がいて、それぞれにユニークな生態があることを知ると、面白くてたまらない。



イカルチドリ。石の色と同化して、肉眼だと何かが動いた、くらいしかわからない。

こんなに何かに熱中したのは、俳句を始めたとき以来かもしれない。俳句を始めたころは、世の中にこんなに楽しいものがあったのかと思い、毎週末はもちろん、平日の夜も句会に行っていた。いま振り返ってみれば、俳句に熱中していたのではなく、句会という遊びが楽しかっただけだと思うけれど。

俳句は20年も続けているので、だんだん、ただ楽しい、ではすまない複雑な状況になってきてしまった。(いえ、楽しいことは楽しいのですが。)

鳥を見るのに、知識も増やしたい、本当は写真ももっと上手に撮りたい。でも、あまり欲を出さないように、と考えている。多種の鳥を見たり、知識を得るには、野鳥の会の探鳥会などに参加するのが、きっと近道だと思う。でも、気ままに見たいので、あくまでも、空いた時間に、ひとりで見に行くことにしている。カメラも、機材やテクニックを追求せず気楽に。そんな感じで、ずっと楽しい状態を持続できればいいと思っている。

 
この土曜日も海辺にシギチ(シギ・チドリの略)を探しにいった。もう、秋の渡りのピークは過ぎてしまったみたい。でも、これからは鴨がどんどん渡ってくるし、小鳥も見やすい季節になってくる。季節ごとに楽しみが尽きない。


亜種チュウダイサギ。白鷺にもいろいろ。

2018年9月2日日曜日

〔週末俳句〕移動時間 千野千佳

〔週末俳句〕
移動時間

千野千佳



最近、急に実家に帰ることがあった。

上野駅から新幹線で1時間半。

「トランベール」をひととおり読んだあと、ひまなので、ネット句会に参加してみることにした。

Twitterで見つけた、某ネット句会。お題は「金」「足」「農」「業」。

駅に着くまで、それぞれのお題で1句ずつ、計4句作ってみることにした。

ノートに俳句の断片をランダムに書いていく。移動中に俳句を作るとき、今までは、頭の中で考えて、携帯電話のメモに入力していた。ところが最近、ある句会で、若くて品のよい美人がノートを大切そうにひろげてメモをとっている姿をみた。

その姿がなんとも良くて、ノートを購入し、持ち歩いている。

新幹線は空いていた。俳句を考えることに疲れると、どんどん田舎になっていく外の景色を見たり、トランベールについている路線図を眺めたりした。長野駅に着く。あとは「業」を考えるのみ。スマートフォンで業を含む熟語を探そうとするも、圏外。やっぱり電子辞書を買うべきか。歳時記はアプリのものを愛用している。ものをできるだけ持ちたくないので、本もあまり買わないようにしているが、角川ソフィア文庫の第五版歳時記は表紙がかわいいので買った。

駅に着くまでに、4句作り終えてネット句会の掲示板へ投句した。満足のいく句と、駄句だと思うものとが半々くらい。移動時間内で終了しなければならないので、開き直りができてよい。

帰りの新幹線では、行きに投句したネット句会の一覧が出来上がっていたので、選句と選評の書き込みをした。90句のなかから、17句選ぶ。17句もあるので、選評は1句につき一言ずつ。みなさん、なかなかお洒落な一言をつけていた。真似てやってみる。

移動時間に俳句を作る、俳句を選ぶのは、制限時間が強制的に設けられるので、とてもよい。

わたしは出張のない仕事なので、仕事中の移動には縁がない。

腹六分で仕事をして、移動時間にはひたすら俳句を作るサラリーマンみたいなものになりたいなと思う。この時代、腹六分でやっていける仕事を探すのはとてもとても難しいが。

2018年8月26日日曜日

〔週末俳句〕上と下 西原天気

〔週末俳句〕
上と下

西原天気


あるときある人が若手俳人の名をあげて、質問してきた。「山口優夢とどちらが上ですか?」。

上?

どちらが?

ううむ。

難しい質問だが、私の知る範囲では、山口優夢のほうがたくさん食べると思う。


すると、こんな新聞記事が。




うわっ! 人を超えてキャラ化しつつある。



ところで、最初にあげた質問。食う話、体重の話ではなくて、俳句のことを訊かれたわけですが、俳句の優劣・俳句の勝敗に興味がないので、答えようがなかった。

例えば、AとB、どちらも素晴らしいなら、そこに優劣・勝敗は要らない。どちらも勝ちでいい。

AとB、どちらもポンコツなら、その勝敗なんて無意味。ポンコツAはポンコツBよりも優れているなどという判断は無意味。

というわけで、山口優夢氏についてすこし心配しているが、じつは他人を心配している場合ではなくて、私も食事制限と運動を本格的に再開すること、余儀なくされている。



知人数人がグループ書道展。見に行く。



とても楽しんだ。


2018年8月19日日曜日

〔週末俳句〕夏が終わる 西原天気

〔週末俳句〕
夏が終わる

西原天気



短歌の現在を概観する講演を聞きに出かけた。参考文献のひとつとして挙げられた山田航編著『桜前線開架宣言』(2015年/左右社)に関して、かねてよりひとつ疑問というか興味があった。それは、帯の背に記された惹句「二十一世紀は短歌が勝ちます」を、みな、どう読むのだろう、ということ。惹句制作者の〈意図ではない。目にした人の受け取り方のことだ。

「二十一世紀は」というのだから、二十世紀は〈負けていた〉のか。

勝ち負けは相対だから、相手がいる。短歌が勝つ相手は何なのだろう。

あるいは、相対ではなく(つまり相手がいるのではなく)、短歌が「勝利」を手にするのか。

人によって、この惹句の読みは変わってきそうだ。

その日の講演者にそのへんのことを質問したかったが、質問時間は設けられていなかった。懇親会で話す機会はあったが、その時点では「勝ちます」問題のことはすっかり忘れていた。



『しばかぶれ』第二集(2018年7月30日/堀下翔編集)に収められた島田牙城インタビューがおもしろい。具体的なエピソードの豊富さにくわえ、質問への応答といったスタイルについてまわる堅苦しさや構えた感じから遠く、炉辺話のような、いい意味の弛緩、気さくが愉しい。

2018年8月12日日曜日

〔週末俳句〕家族でする句会 千野千佳

〔週末俳句〕
家族でする句会

千野千佳



2年前の夏、句会が楽しくてしょうがなかったわたしは、自分が主宰となり句会を開くことにした。できれば6人くらいでやりたい。

メンバーをどうしよう。わたしが普段参加している句会のメンバーを誘うのは畏れ多い。職場のひとを誘ったらドン引きされそうだし、ごはんに行く友達は今は1人しかいない。ということで家族を誘って句会をすることにした。

せっかくなので、俳号をつけることにした。

父、俳号「海士」(うみし)。海に潜ってサザエやもずくを採るのが趣味。自らこだわりの俳号をつけてきた。

母、俳号「こつぶっこ」。亀田製菓のお菓子こつぶっこのキャラクターに似ているので。
姉、俳号「キツネ」キツネ顔。

友達、俳号「みやじ」エレカシのファン。

友達の父、俳号「鶴の爺」俳句の腕に覚えありとのこと。

わたしの俳号はスイスロールとした。

1人3句出し。お題は「花火」「夏休み」「その他自由」とした。無記名で短冊に各々記入。3句✕6人で18句集まった。その中から1人3句いいと思うものを選び、うち1つを特選とする。友達とその父は投句のみの参加となった。

わたしの父と母はあまり本も読まないし、勉強を熱心にするタイプではない。姉も同様。句会をやりたいと言うと、父と姉は面白がってやる気になったが、母はそんな難しいことは嫌だ、と言った。母は勉強が苦手で、作文なんてもってのほか。わたしが中学生の頃、母の日記を盗み見て、誤字や文法上の誤りを指摘したら、「いやな子だね」と言われた。
母が作った俳句をみせてもらったら全く意味が通じないものだったので、わたしが手を入れた。

おのおのの作品を一つずつ紹介する。

 大花火五秒遅れて届くおと     父(海士)

 墓参りBGMはひぐらしで        姉(キツネ)

 教えてよ手持ち花火のできる場所      友達(みやじ)

 えごを煮る木べらの重くなりにけり     母(こつぶっこ)

 昼寝する孫を囲んで笑顔かな     友達の父(鶴の爺)

 ひぐらしや母の手紙の誤字だらけ     私(スイスロール)

一番人気はわたしの句「ひぐらしや母の手紙の誤字だらけ」。よかった。内輪ネタを盛り込めたのが高評価につながった。あとは鶴の爺の句が人気を集めた。わかりやすく、まとまりもよい。しかし父が「鶴の爺の句はありがちなんだよなぁ」とつぶやいていた。わたしは父を見直した。

俳句なんてどうしたらいいかわからない、と言っていた面々も、いざ作るとなると指で音数を数えたりして、数日間は頭が俳句モードになっていたようだ。自分で作った俳句には愛着がわくもので、句会で自分の句が読まれるがどうか、とてもどきどきする。句会の一番の醍醐味だと思う。主宰ぶって、「この句のどこがよかったのですか?」と聞いてみたが、面々は少し恥ずかしそうに「なんとなくだよ」と答えていた。

句会を終えて楽しくなったわたしたちは、近所の夏祭へ直行し、東京音頭の輪の中へ飛び込んだ。踊りという季語でなにか作れないかと考えながら。

2018年8月5日日曜日

〔週末俳句〕署名と花籠 小津夜景

〔週末俳句〕
署名と花籠

小津夜景


ここのところ東京にいて、週末ごとに人前に出ていた。

7月29日(日)

本屋B&Bで新刊『カモメの日の読書 漢詩と暮らす』発売記念のトークイベント。タイトルは「海外翻訳文学としての漢詩 ~古典との新しいつきあい方」。お相手は詩人の蜂飼耳さんと『未明』ディレクターの外間隆史さん。造本のこと、唐詩と宋詩の違い、江戸の女性漢詩人、土屋竹雨「原爆行」などについて話す。

イベント終了後は、あらかじめ考えていた方法で本にサインをする。サインってなんだか偉そうだし、なにより単純に恥ずかしいのでなんとかならないかなあ…と前から思案していたのですけど、下の写真の場所だったらすんなりできるので気に入っています。


8月4日(土)

編集工学研究所で、風韻講座の特別編「半冬氾夏の会」に出演。タイトルは「二〇一八年夏秋の渡り」で、酒井抱一「夏秋草図屏風」がほのかに匂いづけされている。お相手は歌人の小池純代さんとイシス編集学校校長の松岡正剛さん。

第1部では前もって参加者に出されていた宿題(拙句から栞にしたい一句を選び、さらにその栞を挟むのにぴったりな本を挙げる)に対して小津が寸評を加えるといった、全くもってご冗談でしょう!的遊戯をおこなう。遊戯の締めには朗読も。第2部では小池&松岡両氏と、複数の言語を耳でどのように捉えているか、俳句を構成しているレイヤーのこと、新刊の話題などについておしゃべりした。

この日は贈り物もいただいた。草花を寄せた花籠で、奇しくも酒井抱一的風韻をそこはかとなく感じさせる。送り主の名を聞くと、まだお目にかかったことのない知人から。人と人とはじかに会うのも楽しいけれど、そこに至るまでの長い時間も文句なしに素敵です。


2018年7月29日日曜日

〔週末俳句〕四文字ワード 千野千佳

〔週末俳句〕
四文字ワード

千野千佳


先日、テレビ番組で四文字ワードだけでロケを乗り切るという企画を観た。俳句的な企画だと思った。文字制限があるなかで、状況に当てはまる言葉を探すゲームだからだ。

この四文字ワードゲームを実際にやってみた。

ちょうど夫がお風呂から出てきた。

私「あがった?」

夫「うん」寒そうにしている。

私「エアコン」と言ってエアコンを消す。

夫「ありがとう」

私「こちらへ」と言って夫をテーブルへ誘導。

「ビーフン」と言ってコンビニで買ったビーフンのお惣菜のビニールをはがす。

「しずかに」と言って電子レンジの扉を開ける。(先日、電子レンジの扉の開け閉めがうるさいと夫に文句を言われたのであてつけで言っている)

「みそしる」と言って鍋を火にかける。みそ汁が沸騰しはじめたら「いかほど?」と聞く。(先日、みそ汁が熱すぎると夫に文句を言われたのであてつけで言っている)

夫「ごめんねぇ」と笑っている。

私「たこやき?」「まってて」冷凍のたこ焼きをレンジで温める。私「おまたせ」「あおのり」「かけてね」

夫、みそ汁のおかわりを催促。私「もうない」「ごめんね」

テレビで横浜横須賀道路を車が逆走したというニュース。私「よこよこ!」(※横浜横須賀道路の略)

夫、チョコプリンを食べている。私「ひとくち」「ちょうだい」あーん、と口を開ける。「のうこう」「あとひく」「しあわせ」

私「今日の私、なにか変じゃない?気がつかない?」と聞くと、夫「わからない」とのこと。

四文字だけで夫婦の会話は成り立つようだ。

いつもよりジェスチャーや表情が大げさになり、上機嫌にみえたのかもしれない。

このゲーム、単調な毎日に飽きたときにいい。日常生活にちょうどよい課題を与えてくれる。

あるいは苦手なひとと話すときや、気乗りしない飲み会のときにひそかにやってみるといいと思う。「うんうん」「そうだね」「なるほど」などで適当に相づちをうち、四文字ワードを見つけたらテンションが上がって「エイヒレ!」なとど叫んでしまいそうだ。



2018年7月22日日曜日

〔週末俳句〕こう暑いと 西原天気

〔週末俳句〕
こう暑いと

西原天気




こう暑いと、

  幸福だこんなに汗が出るなんて  雪我狂流

なんてことも言ってられない。

外を歩くとき、着替えのシャツを持っておくと、便利ですよ。丸く畳んでキッチン用の小さなポリ袋に入れて鞄へ。カメラなど精密機器の緩衝材にもなります。


週刊俳句の読者からメールがいただくことがあります。先日は、「西原さんが亡くなったあとも週刊俳句をなんとか残す方法」を考えているとか書いてあって、「おい、勝手に殺すな! 長生きさせろ!」と心の中でだけ反応して、返信メールは打ちませんでした。

また先日は、俳句世間への不信感をつのらせて、かなり煮詰まったメールが来たので、「とりあえず、これ、見て ↓↓↓」と返信しました。

goo.gl/YnLQCL

みなさま、この一週間も、健やかにお過ごしください。