樋口由紀子
ガラガラヘビ海に向かって「バカヤロー」
吉田吹喜 (よしだ・ふぶき)
蛇年生まれのせいか、そんなに蛇が苦手ではない。確かに気持ちいいものではないが、その程度である。夫は大の蛇嫌いで蛇に出会うと普段の10倍ぐらいの速さで逃げる。相性が悪いのかもしれない。
ガラガラヘビが海に向かって「バカヤロー」と叫ぶわけがないから、叫んだのは作者だろう。「バカヤロー」と叫びたいことがあっても、そんな事は微塵も感じさせないで生きていくのが生きていくということだと作者は思っている。だから「ガラガラヘビ」に身代わりをしてもらった。ではなぜ「ガラガラヘビ」なのか。ガラガラヘビは蛇の中では大柄である。そういえばと思い当たる節がある。ガラガラヘビは危険が近づくと尾を急激に振って、「じゃあ」とか「じい」とかの独得の音を発する。その「ガラガラ」の音に自分に重ねているのかもしれない。「おかじょうき」(2017年刊)収録。
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