2018年7月9日月曜日

●月曜日の一句〔石寒太〕相子智恵



相子智恵






点滴や梅雨満月の高さより  石 寒太

句集『風韻』(紅書房 2017.11)所収

夜、病院のベッドに仰臥して点滴を受けている。入院しているのだ。吊るしてある薬液のパックの後ろには、窓から満月が見えている。

一滴ずつ落ちる薬液をぼんやり眺めていると、薬液のパックの高さと、梅雨満月が同じ高さであることに気がついた。もちろんその距離は全く違うのだけれど、この病院のベッドの上では、二つは同じ場所にあるのだ。

梅雨の月だから、きっと輪郭は滲んでいるのだろう。滴るような満月を見ているうちに、だんだんと梅雨の満月から降り注ぐ滴が、体内に入っていくような気持ちになってくる。
淡々と写生しながら、読者を静かで幻想的な世界へと連れていってくれる。リアルで、しかも美しい景だ。そしてその奥に、境涯が透けている。

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