樋口由紀子
太刀魚のひかりするするとしまう
瀧村小奈生(たきむら・こなお)
太刀魚が釣り上げられた瞬間を見たことがある。まばゆいばかりにきらきらとして、この世のものではなかった。陸にあがるとひかりは急速に力を失くした。海に居てこそのひかりで、釣り上げるべきではないと思った。
「するする」というさまが実にいい。素早く、一瞬に、ひかりを外にもらさないようにとの配慮がうかがえ、その動作が目に浮かぶ。さて、どこに仕舞うのだろうか。「太刀魚」は銀色の外観で、「太刀」に似ているところから「太刀魚」と名付けられた。太刀を自分の懐にしまうようにひかりを自分の裡にしまったのだろうか。明と暗、光と影の絶妙のコントラストである。「太刀魚」だけの漢字が「太刀魚」映えしている。「第二回柳俳合同誌上句会」
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