2022年5月20日金曜日

●金曜日の川柳〔菊地俊太郎〕樋口由紀子



樋口由紀子






もろこしの粒を数えて頓死する

菊地俊太郎 (きくち・しゅんたろう) 1934~1997

びっしり詰まったとうもろこしの粒を数えていたら、あるいは数え終わったら、頓死するのか。「頓死」という語は決定的な重みを与える。せつなくて哀しい。将棋で使われる言葉らしいが、ここではにわかに死ぬことだろう。

それが自分の生のすがたでもあると認識しているのか。どんな運命も受け入れるということなのか。そのようなに自分自身を感受し、死と向き合っている。そんなことがあるともないともしれないものの間に今生きている。あの小さな黄色の粒々には風変わりな情緒がある。自らの死生観をもろこしの粒で視覚的に語っている。『近・現代川柳アンソロジー』(2021年刊)所収。

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