樋口由紀子
うたた寝が起きてうたた寝叱りつけ
岸本水府(きしもと・すいふ)1892~1965
うたた寝Aとうたた寝Bがともにうたた寝をしている。そこはうたた寝をしていけないところ、たとえば、店番とか、観劇とか、でも、退屈で、暇だし、ついうとうとしてしまった。うたた寝Aがしまったと思って、あわてて目をあけると、なんとうたた寝Bがうとうとしている。うたた寝Aはうたた寝などしていないふりをして、うたた寝Bを「おい」と起こして、叱りつける。
岸本水府の川柳はなんといっても言葉運びが上手い。落語の一場面のような軽快さがあり、その語り口はぽんぽんぽんとテンポが心地よい。機知に富んだ、軽みの川柳の見本のようである。
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